賃貸住宅の建設が好調。大手メーカーも続々と、対応強化の動き
2016年1月3日 15:01
国土交通省が発表した「新築住宅着工統計」によると、全国における2015年9月の新設貸家着工戸数は前年同月比13.3%増の34,092戸と5ヵ月連続の増加となっている。この理由の1つには、2014年1月に施行された税制改正によって、相続税の課税対象が広がったため、相続税対策として賃貸経営に乗り出す世帯が全国的に増えているためである。また、それにともなって、大手を中心に住宅メーカー各社も賃貸物件に力を入れはじめており、魅力的なラインナップが充実していることも、着工戸数の増加に一役買っていることは間違いないだろう。
例えば、「いい部屋ネット」のテレビCMなどでもお馴染みの大東建託<1878>は、同社独自の賃貸経営受託システムを導入し、建物賃貸事業の企画・立案から賃貸建物の設計・施工、入居者様斡旋、管理・運営、そして賃貸経営における様々な収支変動リスクへの対応までを引き受けている他、35年間の一括借上げシステムなども導入し、オーナーの経営不安やリスクを軽減することに務めている。
また、約35.5万戸の賃貸住宅の実績をもつパナホーム<1924>では、パナソニックグループの総合力を活かした賃貸物件を展開しているが、中でも注目されているのが、工業化住宅において業界で初めてとなる7階建の販売を始めたことだ。首都圏をはじめとする都市部の住まいづくりでは、限られた敷地を有効活用するため、建物を多層化して高度利用を図り、自宅と店舗・賃貸との併用や賃貸専用など、多彩なプラン・用途の建物が提案必要だとしている。
さらに、積水ハウス<1928>も11月に賃貸事業の拡大を発表した。同社では2019年までに首都圏を中心に需要の大きい4階建て物件の受注を14年度比で約2.5倍とする意向を示した。積水ハウスでは、4階建ての提案強化により従来の構造計算から建築確認許可までの期間を3~6ヶ月から、4~7週間に短縮した。加えて、高遮音床システム「SHAIDDO50」を導入して、27センチの床コンクリート厚の鉄筋コンクリート造マンション並みの遮音性能を実現し、不満の多い音問題を解消して競争力を高める。また、柱位置を自由にできるため、二世帯住宅や賃貸・店舗併用住宅に対応しやすい3・4階建て賃貸住宅「BEREO」で、同社独自のβシステム構法の強みを活かし、工場生産で短工期・高性能という工業化住宅のメリットを発揮していくという。
昭和時代からのマイホーム至上主義が薄れつつある今、賃貸に注目が集まるのは当然の流れともいえるだろう。住宅メーカー各社がその持ち味と特色を活かし、賃貸住宅市場がますます活性化し、住みよい物件が増えることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)