2015年、「爆買い」に支えられ続けた百貨店業界
2016年1月1日 16:31
日本百貨店協会が2015年12月18日に発表した、11月の全国百貨店売上高によれば、売上高は前年同月比2.7%減の5418億円であり、8ヶ月ぶりにマイナスとなった。しかし、売上高を商品別に見てみると、「化粧品」が同11.1%増、「美術・宝飾・貴金属」が同11.3%増と、主力商品である紳士服や婦人服よりも高い伸び率をみせている。これはやはり、今年百貨店業界の一番の話題であった、中国人を中心とする訪日外国人旅行客による「爆買い」の影響が大きく関わっているだろう。事実、同日に日本百貨店協会が発表した「11月の外国人観光客売上・来店動向」によれば、免税総売上高は同166.5%増の156億円と大幅に伸びている。購買客数も同172.4%増の21万人と、訪日外国人旅行客の旺盛な購買欲が、なおも衰えていない現状がうかがい知れる。
こうして、14年4月の消費税増税以降、売り上げ低迷状態に陥った百貨店業界に対して、「恵みの水」となった訪日外国人旅行客による「爆買い」だが、はたしてこうして状況が16年以降も続くかは疑問だ。中国の景気に対しては今、懸念が持たれている。その懸念が現実のものとなれば、百貨店業界も「爆買い」の恩恵が受けられなくなる可能性もある。景気の先行きの不透明さから、国内の消費マインドが高まりきらないことを考えると、「爆買い」頼りの今の状況は決して安全ではない。
しかし、百貨店の多くは訪日外国人旅行客向けの売り場作りに注力している。12月24日には、近鉄百貨店<8244>が訪日外国人旅行客の需要を取り込むために、16年以降、中国やインドネシアなどの新興国向けの営業を強化する方針を示している。こうした動きはもちちん、それが売り上げに占める割合を考えると当然のことではあるのだが、あまりに一辺倒過ぎるのではないかという印象も受ける。安全な経営のためには「リスクを分散する」のが基本だが、国内の需要も取り込む施策を積極的に行うなど、「爆買い」効果が薄れた時のリスク回避策が必要ではないだろうか。(編集担当:滝川幸平)