創業140周年の東芝、テレビやパソコン、一般白モノ家電の自社生産から完全撤退を決定
2015年12月26日 18:13
創業140周年にあたる2015年10月に不正会計問題を受けて経営陣を刷新した大手電機メーカー「東芝」。そして今年12月、その東芝が、テレビの自社生産から完全撤退することを決めた。自社生産で唯一のインドネシア工場を台湾のコンパル社に売却し、エジプトにある合弁工場も合弁相手のエルアラビ社に譲渡することとした。テレビ製造事業撤退は、あの内部告発から発覚にいたった件の不正会計の問題を受けて不振が続いている家電事業の生産体制を縮小する一環として決めたもの。具体的には、テレビやパソコン事業の開発拠点である青梅事業所を閉鎖する。このほか、いわゆる白モノ家電については、インドネシアの洗濯機の工場を閉鎖するとしている。
不正な会計処理の問題などを受けて東芝は、国内外で合わせて7800名あまりの大規模なリストラに踏みきる。これに伴って、2016年3月期の年間グループ全体決算で、最終損失が5500億円と過去最大の赤字になる見通しだ。
これは、リーマンショック後の2009年3月期に計上した、3900億円余りの赤字を上回り過去最大。東芝はこうした合理化を進めるとともに半導体事業などに投資を集中させることで、経営の立て直しを急ぐ。
テレビ、パソコン、白物家電を含む家電事業で、近く早期退職を募集する方針も固めた。この家電事業では不正会計の問題が発覚する前に決まっていた分も含めておよそ6800名の早期退職や配置転換を行なうほか、新たに本社部門でも約1000名のリストラを行なう。いずれも12月下旬に発表するという。
東芝は今年1月、海外でのテレビの自社開発販売から撤退すると発表。2016年度にテレビを含む赤字事業を黒字化することをめざして不採算事業のリストラを加速させており、早ければ今年度中にテレビ工場の売却を終えたい考えだ。東芝のテレビ事業は、長く赤字が続き、不正会計問題でさらなる利益の水増しが明らかになっている。
今年春から、テレビ自社生産撤退に向けて、水面下でインドネシアとエジプトのテレビ工場の売却先を探していたが、不正会計問題が撤退を促進させたともいえる結果となった。懸案だった工場売却に目途がついたことで、生産コストなどの固定費削減を見込んでいる。今後、テレビはコンパル社などに生産を委託する形で国内販売は続けつつ、「TOSHIBA REGZA」ブランドも残す方針。ただ、開発部門は人員も含めて大幅に縮小しそうだ。
パソコン事業は、分社化したうえで人件費の削減も進めるために早期退職の募集に踏み切る。募集規模は数100名にのぼるとみられる。パソコン事業では、富士通、ソニーから独立したVAIOと事業を統合する検討を進めている。白物家電事業では、インドネシアの工場閉鎖以外でも売却を検討、売却先企業を探している。
国内の大手家電メーカーは、液晶やプラズマディスプレーなどを使ったテレビ生産で海外勢に先行した。が、ここ10年ほど安くて品質も上がった中韓メーカーの製品が台頭し、価格競争が激化、日本メーカーの収益が悪化した。日立はすでにテレビの自社生産から完全撤退、生産委託に切り替えている。パナソニックやシャープもテレビの生産拠点を縮小している。(編集担当:吉田恒)