進む、障がい者雇用。積極的な自治体、企業に共通する意識

2015年12月19日 20:48

 厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課が2014年9月に発表した「最近の障がい者雇用の現状と課題」によると、日本における身体・知的・精神障害者の総数は約788万人。うち18歳以上65歳未満の在宅者は約324万人となった。この数字は、日本の人口の約6%にのぼる。

 2013年度に障がい者雇用率が1.8%から2%へ引き上げられたことで、目標達成には民間企業だけで約5.5万人もの新たな障がい者雇用が必要になることから、企業でも障害に対する知識の啓発や、彼らを受け入れる為の社内環境を整備することが急務となった。

 しかし、問題は健常者雇用と比べ、障がい者雇用では労使ともに業務適性が判別しづらいことだ。ただ単に受け入れれば済むという話ではない。障がい者も優秀な人材であり、貴重な労働力と考えるのなら、適性に合った業務に就いて、就労意欲を高く保つことが重要だ。

 各都道府県の自治体でも、障がい者の雇用促進のための施策を行っている。たとえば、栃木県では「障がい者就業体験事業の事業所募集(就職支援サイトWORK WORKとちぎ)」として、新たに障がい者雇用を検討している企業に対し、10日程度の短期職場実習を行っており、それにより雇用イメージを掴むことができる仕組みを作っている。また、新潟県では「新潟県障害者職域拡大アドバイザー」を設置し、職域拡大アドバイザーが企業を訪問し、障がい者雇用に関する相談を受け付けている。

 民間企業でも積極的に取り組んでいる企業は多い。例えば、2011年の時点で、すでに実雇用率2%を達成している日立製作所<6501>もその中の一社だ。同社では、2005年から各種研究会やセミナーに参加し、情報収集、事例収集に努め、雇用の可能性を調査しており、2007年からは精神障がい者の実習を受け入れている。精神保健福祉士の配置や雇用促進チームの設置、さらには社内からサポーターを募集するなど、まさに全社を挙げて取り組んでいるのだ。

 また、ヤマハ発動機株式会社<7272>も、2015年10月1日付で、障がい者雇用促進のための新会社「ヤマハモーター MIRAI 株式会社」を設立した。同社はこれまで、他の企業同様、健常者と障がい者が一緒に就労できる職場運営を目指してきた。しかし、新会社では、まずは部品包装業務と同社敷地内の清掃業務からスタートし、段階的に業務領域を拡大していく計画で、その中で障がい者が個々の能力を発揮できる職場を確保することで雇用促進に努める。さらに、社員それぞれの能力開発を進め、社会的自立を支援していくとしている。

 障がい者雇用については、まだまだ労使ともに課題があるのは仕方がないだろう。しかし、積極的に取り組んでいる自治体や民間企業の様子をみると、決して特別扱いするのではなく、会社の一員として受け入れようという姿勢が感じられる。また、そういう姿勢の企業だからこそ、雇用も定着するのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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