ネコの脳でアルツハイマー病と同じ現象が起きていることを確認―東大・チェンバーズ・ジェームズ氏ら

2015年12月14日 21:36

 東京大学のチェンバーズ・ジェームズ助教らによる共同研究グループは、ネコの脳にも、ヒトのアルツハイマー病と同じように、神経原線維変化が生じることを発見した。

 アルツハイマー病は高齢者に認知症を起こす疾患で、治療法がないため世界的な高齢化にともなって患者数が急増している。アルツハイマー病は、脳でβアミロイドと高リン酸化タウと呼ばれる蛋白質が蓄積し、海馬の神経細胞が脱落することによって発症する。ヒト以外の多くの哺乳類の脳でも加齢性にβアミロイドの沈着が観察されるが、高リン酸化タウの蓄積と海馬の神経細胞脱落は動物ではみつかっていなかった。

 今回の研究では、ペットとして飼育されていたネコの死亡後、脳を詳しく調べたところ、8歳頃から脳にβアミロイドが沈着し、14歳頃から高リン酸化タウが蓄積することが分かった。高リン酸化タウが蓄積した神経細胞では、神経原線維変化と呼ばれるアルツハイマー病に特有の病変が確認された。

 また、神経原線維変化を構成するタウ蛋白質のアイソフォームがヒトのアルツハイマー病と同じであること、神経原線維変化が形成されたネコでは海馬の神経細胞が減少していることが明らかになった。

 今後は、ネコの脳をさらに研究することで、βアミロイドとタウ蛋白質の関係が明らかにされ、アルツハイマー病の病態解明と治療法開発につながることが期待される。

 なお、この内容は「Acta Neuropathologica Communications」に掲載された。論文タイトルは、「The domestic cat as a natural animal model of Alzheimer's disease」。

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