1~11月の「老人福祉・介護事業」の倒産は66件に 厳しい淘汰の波が押し寄せる

2015年12月13日 20:13

 介護報酬が今年4月から9年ぶりに引き下げられたなか、東京商工リサーチの調査によると2015年1~11月の「老人福祉・介護事業」の倒産は66件に達したという。すでに前年の年間件数(54件)を上回り、介護保険法が施行された2000年以降では、過去最悪ペースをたどっている。介護職員の深刻な人手不足という難題を抱えながら、業界には厳しい淘汰の波が押し寄せているという。

 全体の企業倒産がバブル景気時並みの低水準で推移するなか、2015年1~11月の老人福祉・介護事業の倒産は66件(前年同期比34.6%増、前年同期49件)に達し、過去最多を更新している。

 一方、負債総額は58億7,200万円(同11.4%減、同66億3,100万円)と前年同期を下回っている。負債10億円以上の大型倒産がゼロ(前年同期1件)に対し、負債5千万円未満が43件(前年同期比38.7%増、前年同期31件)と増加し、小規模倒産が大半(構成比65.1%)を占めている。

 老人福祉・介護事業倒産の内訳をみると、施設系のデイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」が26件(前年同期比100.0%増、前年同期13件)と2倍になり、増勢が目立つ。また、「訪問介護事業」も26件(同18.1%増、同22件)と前年を上回っているとしている。

 また、2010年以降に設立した事業者の倒産が36件(構成比54.5%)と過半数を占め、設立から5年以内の新規事業者が目立つ。従業員数別でも、5人未満が42件(前年同期比68.0%増、前年同期25件)と増加をみせ、小規模事業者の倒産が全体の6割(構成比63.6%)を占めた。このように、小規模かつ新規事業者が倒産増加の中心になっているという。

 

 原因別では、最多が販売不振(業績不振)の29件(前年同期比11.5%増、前年同期26件)。次いで、事業上の失敗が18件、既往のシワ寄せ(赤字累積)が7件の順だった。

 形態別では、事業所の解体・消滅である破産が63件(同40.0%増、同45件)と全体の9割(構成比95.4%)を占めた。この一方で、再建型の民事再生法は3件(前年同期2件)にとどまり、業績不振の事業者では再建が難しいことを物語ったとしている。

 今年4月の介護報酬改定では、特に定員10人以下の小規模デイサービスの基本報酬の下げ幅が大きく、その影響が懸念されていた。2015年の老人福祉・介護事業の倒産では、施設系のデイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」の増加が際立つとしている。

 今回の介護報酬の改定では、基本報酬がダウンした一方で、充実したサービスを行う施設への加算を拡充したが、小規模事業者では加算の条件をなかなか満たせないところが多いという。異業種や小資本での起業が可能なため参入が相次いだデイサービスだったが、ここにきて小規模事業者の経営環境は厳しさを増している。収益改善が遅れている事業者を中心に今後の動向から目を離せないとしている。(編集担当:慶尾六郎)

関連記事

最新記事