二輪マフラーの技術がカクテルシェーカーに? 期待膨らむ、技術転用

2015年11月21日 20:41

 昨今、様々な業界での異業種間コラボレーションやスピンオフ製品が話題になっている。 例えば今年6月、米ゼネラル・エレクトリック(GE)社が、航空機向けのガスタービン技術を転用した船舶用の小型エンジンの開発を発表したのは記憶に新しい。世界規模で環境規制が強まる中、船舶向けの液化天然ガスの供給設備も増えており、これまで主流だったディーゼル方式からガスタービン式への移行が進んでいる。今後、需要が高まることを見越して、GE社は新技術で商船向けエンジンに本格参入を果たした。

 事業戦略としての大規模な技術転用だけでなく、もっと単純に商品レベルでの技術の応用や転用も多い。その中でもよく見かけるのが「NASAの技術を使った」「NASAで使われている」といった謳い文句の商品だ。

 NASA(アメリカ航空宇宙局)は言うまでもなく、宇宙開発のために世界の最先端技術が結集されている組織。最近では、火星探索に向けたヒューマノイドロボットを開発するなど、高度な技術力を保有している。しかし、「NASAの技術を使った」商品は、意外と庶民的なものも多い。

 アウトドアや防災用として販売されている銀色のサバイバルシートや、スペースシャトルのハイテク断熱材をパウダー化した断熱材、宇宙飛行士のためにNASAが開発した「テンパーフォーム」というクッション材を肩ベルトに使用したランドセル「地球NASAランドセル」など、生活雑貨のようなものにまで、惜しみなく最先端技術が応用・転用されているのは面白い。

 一方、日本のものづくり技術の応用も盛んに行われている。二輪車で好調のヤマハ発動機<7272>は、バイクのマフラーなどに用いられている同社独自の技術「ナノ膜コーティング」を転用することに積極的だ。「ナノ膜コーティング」は、内側は高温の排気ガスに、外側は風雨にさらされるマフラーにも用いることができるほどの高い耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性を持つコーティング技術。これだけの高い耐熱性のある無色透明の成膜技術は世界にも類がなく、さらに自動車・二輪車業界全体を見ても、排気系部品へのコーティング加工技術は業界初という独自性の強い技術なのだ。

 「ナノ膜コーティング」の研究開発を行った担当者曰く「目指したのは、変色しない、錆びない、そして宝石のような輝きを放つマフラー」。その言葉通り、宝石のような輝きを放つ、高度なコーティング技術は、自動車のエンブレムやマフラーカッターへの応用のほか、異業種・他業界からの注目度も高い。すでに愛知県のプレス部品加工会社がカクテルシェーカーのコーティングに用いて実用化し、大手百貨店において販売を開始するなど、自動車・二輪車業界だけに留まらない展開をみせている。

 日本のものづくりにおける、職人の技術力と品質は、世界でも高い評価を受けているが、これからは同業種だけでなく、異業種への転用や応用でも注目が高まりそうだ。(編集担当:松田渡)

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