肌に貼り付けて温度を測定できるセンサーを開発―東大・横田知之氏ら
2015年11月16日 21:26
東京大学の横田知之特任助教・染谷隆夫教授らの研究グループは、薄くてしなやかなプラスティック製の温度計を印刷プロセスによって作製し、生体組織に貼り付けて表面温度の分布を測定することに成功した。
印刷プロセスを利用して電子回路やセンサーなどを製造する技術を「プリンテッドエレクトロニクス」と言い、生産性に優れる次世代の製造手法として、世界中で活発な研究開発が進められている。
今回の研究では、グラファイトを添加したアクリル系ポリマーを使い、高い感度(0.02°C)と速い応答速度(100ミリ秒)を両立したプリンタブルなフレキシブル温度センサーの開発に成功した。この温度センサーは、1000回以上繰り返し温度を上げ下げしても高い再現性を示し、さらに曲率半径700マイクロメートルに曲げても壊れることなく、また生理的環境でも動作する。
開発の決め手となったのは、ポリマーを合成する際に、2種類のモノマーの重合割合を変化させることによって、温度センサーの応答温度を体温付近に調整できるようになった点にあり、具体的には、オクタデシルアクリレートとブチルアクリレートの2種類のモノマーの混合比率を変化させて、25°Cから50°Cの範囲で応答温度を制御した。
今後は、赤ちゃんや病院の患者の体温を常時モニターすることによって、体調の異変をいち早く察知することができるようになるなど、ヘルスケア、医療、福祉など多方面への応用が期待されている。
なお、この内容は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載された。論文タイトルは、「Ultraflexible, large-area, physiological temperature sensors for multipoint measurements」(和訳:多点計測のための超薄型大面積生理温度センサー)