【工業用ゴム製品業界の4~9月期決算】世界的に好調な自動車生産を受けて中間期は大幅増益が揃うが、通期は上方修正なし

2015年11月14日 23:30

 11月10日、工業用ゴム製品大手7社の4~9月期(第2四半期/中間期)決算が出揃った。ゴム業界ではタイヤは別格として、ゴムベルト、ゴムホース、防振ゴム、パッキン類などを「工業用ゴム製品」と分類している。日本の工業用ゴムの技術は世界でも最高水準で、輸出や海外現地生産も盛んに行われている。一般産業資材向けの需要もあるが、自動車業界からの受注生産が大半を占める。そのため2008年のリーマンショックの影響をもろに受けるなど、自動車メーカーの生産動向に左右されやすい。

 4~9月期の業績は北米を中心に自動車業界の活況に支えられ、決算では最終利益に大幅増益が揃うなど、おおむね好調。しかし通期業績見通しは中国などアジアや新興国での景気減速、自動車生産の減少を見込んで住友理工、バンドー化学が下方修正し、それ以外も据え置きで上方修正が1社もないなど、行方を慎重にみている。

 ■住友理工は黒字転換し、フコク以外は増益

 4~9月期の実績は、住友理工<5191>は売上高8.8%増、営業利益133.6%増(2.33倍)、税引前利益299.9%増(3.99倍)、四半期損益は前年同期の2.0億円の赤字から19.9億円の黒字に転じ、最終損益は前年同期の8.6億円の赤字から10.6億円の黒字に転じた。前年同期と同額の9円の中間配当を行っている。前年同期はドイツのアンヴィス(Anvis)社について事業構造改善費用を計上して利益が抑えられ、その反動で大幅増益になった。

 日本ゼオン<4205>は売上高0.6%減、営業利益13.8%増、経常利益10.3%増、四半期純利益21.3%増の減収、2ケタ増益。中間配当は前年同期と同じ7円とした。主力のエラストマー素材事業部門の自動車向け合成ゴムは、原料価格下落に伴い販売単価が下がっても円安効果でカバーできている。エンジンまわりの特殊ゴムも堅調に推移している。高機能材料も光学フィルムがスマホや液晶テレビ向けに好調を維持している。

 バンドー化学<5195>は売上高2.6%増、営業利益40.8%増、経常利益36.6%増、四半期純利益34.8%増の増収、2ケタ増益。中間配当は前年同期比1円増の6円とした。自動車・産業機械向けのベルト事業も、主に精密機器向けのエラストマー製品事業も小幅増収、大幅増益だった。

 西川ゴム工業<5161>は売上高11.3%増、営業利益40.6%増、経常利益25.7%増、四半期純利益105.1%増(約2倍)の増収、2~3ケタ増益。中間配当は前年同期と同じ18円とした。自動車部品は増収、大幅増益。一般産業資材は減収増益。主要取引先のマツダの国内生産は好調で、北米、メキシコの子会社の売上、利益も伸びている。

 鬼怒川ゴム工業<5196>は売上高5.9%増、営業利益24.4%増、経常利益8.0%増、四半期純利益10.0%増の増収、2ケタ最終増益。中間配当は前年同期比1円増の6円とした。主要取引先の日産が北米、中国で販売台数を伸ばしたのに連動して、車体シール材、防振ゴム、ブレーキ系、サスペンション系の部品の受注が伸びた。北米向けは為替の円安の好影響も受けた。アジアでの売上拡大による操業度の増加、原材料の現地調達化拡大、グローバル同一基準のモノづくり改善活動によるコスト削減などがあいまって、営業利益は大幅増益になっている。

 フコク<5185>は売上高6.5%増、営業利益3.4%減、経常利益11.4%減、四半期純利益13.6%減の増収減益。中間配当は前年同期と同じ10円とした。アメリカ、ベトナムで現地の日系自動車メーカー向けの製品が好調に推移している。

 三ツ星ベルト<5192>は売上高5.6%増、営業利益10.1%増、経常利益6.6%増、四半期純利益8.7%増の増収増益。中間配当は前年同期比1円増の9円とした。当初予想に比べて売上高は3.9%、営業利益は25.7%、経常利益は38.1%、四半期純利益は42.9%それぞれ上積みされた結果で、前年同期比の営業利益の増益幅は2ケタに乗せた。その理由として為替の円安を挙げている。主力の自動車用ベルトは海外で好調で、国内でも新製品の抗菌ベルトの売れ行きは堅調。

 ■世界の自動車生産の今後の行方を慎重にみる

 2016年3月期の通期業績見通しは、住友理工<5191>は前年同期比で売上高2.2%増、営業利益34.5%増、税引前利益55.0%増、当期利益55.7%増、最終利益119.3%増(2.19倍)。5月8日に発表した当初の通期見通しを、売上高は100億円、営業利益は50億円、税引前利益は40億円、当期利益は35億円、最終利益は35億円、それぞれ下方修正した。それでも前期比で増収、大幅増益になる見通し。前期と同額の期末配当9円、年間配当18円の予想は変わらない。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は42.4%。下方修正の理由は、中国、アジア新興国の景気減速、南米経済の低迷、ヨーロッパの自動車メーカーの減産などの影響を見込んだため。

 日本ゼオン<4205>は売上高4.1%増、営業利益13.3%増、経常利益2.9%増、当期純利益20.5%増の増収、最終2ケタ増益で修正なし。予想期末配当は前期比1円増の8円、予想年間配当は前期比1円増の15円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は47.5%だった。合成ゴム、合成ラテックスなど主力のエラストマー事業は原料安、円安、工場稼働率の改善が揃って過去最高益更新を見込んでいる。

 バンドー化学<5195>は通期業績見通しの売上高を50億円減らし4.8%増から0.4%減に下方修正。20.9%増の営業利益、18.7%増の経常利益、19.7%増の当期純利益に修正はなかった。予想期末配当は前期比1円増の6円、予想年間配当は前期比2円増の12円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は57.6%だった。売上高の下方修正の理由は中国をはじめアジア全般の成長鈍化による先行き不透明感。主力の自動車向けのベルト製品が中国の自動車生産減少の影響を受けると見込んでいる。

 西川ゴム工業<5161>は売上高3.9%増、営業利益41.0%増、経常利益48.4%増、当期純利益114.5%増(約2.1倍)の増収、2~3ケタ増益で修正なし。予想期末配当は前期と同じ18円、予想年間配当は前期と同じ36円でこれも修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は33.1%だった。中国をはじめアジア新興国で自動車生産が減少する影響を国内や北米の好調さでどこまで補えるかがカギになりそうだ。

 鬼怒川ゴム工業<5196>は売上高5.1%増、営業利益21.2%増、経常利益7.8%増、当期純利益16.6%増の増収、2ケタ最終増益で修正なし。予想期末配当は前期比1円増の6円、予想年間配当は前期比2円増の12円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は41.8%だった。

 フコク<5185>は売上高2.8%増、営業利益1.3%増、経常利益10.1%減、当期純利益14.0%減の増収、最終2ケタ減益で修正なし。予想期末配当は前期と同じ10円、予想年間配当は前期と同じ10円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は59.5%だった。

 三ツ星ベルト<5192>は売上高1.1%増、営業利益6.1%減、経常利益20.9%減、当期純利益25.2%減の増収減益の通期見通しを修正していない。予想期末配当は前期比3円減の9円、予想年間配当は前期比2円減の18円で修正なし。人件費コストの増加と為替差損の発生を予測して最終2ケタ減益を見込んでいる。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は69.9%もあるので上方修正の余地はありそうだが、通期見通し据え置きの理由として中国など海外経済情勢の不透明感を挙げている。(編集担当:寺尾淳)

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