非正社員を正社員へ 実効確かめ法人税引下げを
2015年11月7日 16:05
厚生労働省調査で非正社員が4割に達した。昨年10月1日現在での平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査で、従業員5人以上の約1万1000事業所と労働者3万4000人から有効回答を得た。
非正社員は派遣労働者が2.6%、パート労働者が23.2%、契約社員(専門職)が3.5%、出向社員が1.2%、再雇用など嘱託社員が2.7%。非正社員活用理由の筆頭は「賃金の節約」(38.6%、複数回答)だった。
深刻なのは「25歳から44歳ぐらいまでの、これから結婚し、家庭を持ち、こどもを産み、育てるという世代の正規労働が相当の勢いで減っているという事態」(民主党・岡田克也代表)だ。
正社員では6割が月額賃金20万円から40万円未満層にあるのに、非正社員では約8割が20万円未満。夫婦ともに就労しなければ生活自体成り立たない。
派遣社員や契約社員の4割近くは「正社員への雇用がない」とし、いずれも5割前後が「正社員になりたい」と希望している。
生涯賃金の差が歴然としているだけでなく、老後の年金受取額でも大差が生じる。若者にとって特に深刻な問題だ。これは「多様な働き方」以前に「生計を立てる」生活基盤の安定と生活設計を立てる基礎の問題。そのためには正社員が基本と言わざるをえない。
夫婦のどちらが生計の柱になるのかは別に、夫婦のうち、いずれかは正社員でなければ子どもを産み、育てることは現実できないだろう。
企業が安価な労働を手に入れやすい派遣社員拡大の道を政府・与党はさきの国会で実現させてしまった。企業はこれまで正社員でこなしてきた分野を人件費抑制のために派遣社員や契約社員、嘱託社員でこなすことになりそう。人件費のみでなく、雇用調整を考えれば、調整しやすい非正社員で賄う方向に動くとみる方が自然だ。
こうした環境を作っておきながら、安倍晋三総理は人材投資や賃金アップを経済界との会合で要請し、塩崎恭久厚生労働大臣も省内にこの9月、自身を本部長とする「正社員転換・待遇改善実現本部」を設け、日本経済団体連合会などに、雇用の質の向上・生産性向上を図るため、非正規労働者の希望・意欲・能力に応じ正社員への転換・待遇改善を図るよう協力要請をしている。
特に「非正社員の希望を踏まえ、勤務地限定、職務限定、勤務時間限定など多様な正社員への転換を」含め、非正社員から正社員への転換を図る必要をあげており、これらがどこまで前進するのか、実効を確認するための現況把握調査と実態を基準にした数値目標と達成度を毎年公表していくなど、掛け声だけに終わらせない取り組みが必要だ。
安倍総理は6日、読売国際経済懇話会で法人実効税率について「数年で20%台にまで引き下げ、国際的に遜色のない水準へと法人税を改革する。この目標の下に、今年4月から2.5%引き下げた。更に来年は0.8%引き下げることを既に決めている。来月決定する税制大綱では、これに確実に上乗せを行い、来年4月から更なる引き下げを実現する」と強調した。
法人税で具体的な優遇策推進を数値で示しているのであれば、非正社員をどこまで正社員に切り替えていくのか、賃金アップにどう取り組むのか、企業姿勢を見定めながら取り組む姿勢が求められる。(編集担当:森高龍二)