疲れを和らげる香りに応答する嗅覚受容体を特定―抗疲労技術の開発に期待=大阪市大・渡辺恭良氏ら

2015年11月6日 16:36

 大阪市立大学の渡辺恭良特任教授・山野恵美特任助教らの研究グループは、抗疲労作用を示す2種の香りに応答する嗅覚受容体を特定した。また、この受容体を活性化する香料の混合物を新たに特定し、この香りが抗疲労作用を示すことを確認した。研究成果は、新しい抗疲労技術の開発につながることが期待されるという。

 香りは、嗅覚受容体を介して認識されることがわかっており、嗅覚受容体の数は動物種によって異なる。1つの香りは少なくとも2個以上の嗅覚受容体によって認識されることが多く、活性化する嗅覚受容体の組合せによって、ヒトや動物は自然界に存在する数十万種類の香りを嗅ぎ分けることができる。また、自然界には、生理的な作用(覚醒、鎮静作用等)をもたらす香りが存在している。

 今回の研究では、ヒトの嗅覚受容体を発現させた培養細胞の評価系を用いて、約400種のヒト嗅覚受容体のうち、どの受容体が抗疲労作用を示す香りに応答するかを調べた。抗疲労作用を示す香りとしては、これまでに研究報告のある「cis-3-hexenol」と「trans-2-hexenal」の混合物と、グレープフルーツ精油を使用した。

 その結果、6種の嗅覚受容体(1A1、2J3、2W1、5K1、5P3、10A6)が2種の香りにより共通して活性化されることが明らかになった。また、これら6種の嗅覚受容体に対し、それぞれの受容体を活性化する新しい香りの探索を行なったところ、「メチルイソオイゲノール」「l-カルボン」「メチルβナフチルケトン」「フェニルエチルアセテート」の4種の香料の混合物であるハチミツのような甘い花の香り(MCMP)が、6種の受容体を活性化することを見出した。

 また、MCMPによる抗疲労作用を調べたところ、香りなしの場合に疲労負荷後に課題の正答率が有意に低下するのに対し、香りありの場合には正答率の低下が認められず、疲労が抑制されたことが示唆された。

 香りの生理作用に関する研究は、グレープフルーツ精油による抗肥満作用やラベンダー精油によるリラックス作用など幾つか知られているが、生理作用に関わる可能性のある嗅覚受容体まで特定し、ヒトの抗疲労における生理作用との関連を確認した研究は今回が初めてという。

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