実効性問われる「1億総活躍国民会議」

2015年10月24日 15:57

 第3次安倍改造内閣の看板になっている「1億総活躍社会」実現にむけた政策協議の国民会議。安倍晋三総理が議長をつとめ、閣僚13人と民間議員15人で構成する。その民間議員の顔ぶれを加藤勝信1億総活躍担当大臣が23日発表した。

 高く掲げた御旗が「1億総活躍社会」であるのに、民間議員の顔ぶれに連合など労働団体の代表など労働界関係者を入れていないのにあきれた。何とも安倍政権の本質が如実に出ているといえそう。

 雇用側を代表する経済団体のトップ・日本経済団体連合会会長で、すでに、政府の正式な諮問機関である経済財政諮問会議の民間議員として関係閣僚とともに政策に大きく意見を反映させることができる立場の榊原定征会長がここでも民間議員に入っているほか、日本総合研究所理事長の高橋進氏、日本商工会議所会頭の三村明夫氏と経済系の人材を相次いで登用。

 被雇用者側の視点が国民会議に反映されるのか、甚だ疑問。福祉関係ではご家族の関係から障害者問題に明るいタレントで、母校の短大客員教授をつとめる菊池桃子さんや社会福祉法人理事長の対馬徳昭氏、保育園代表の松本理寿輝氏、日本パラリンピアンズ協会の大日方邦子副会長の名があり、その視点が活かされそう。

 行政全体の視点や専門家としての視点では東大の飯島勝矢教授、慶応大学の土居丈朗教授・樋口美雄教授、文京学院大の松為信雄教授、放送大学の宮本みち子副学長、元総務大臣の増田寛也氏らに期待したいと思うのだが。

 ただ、労働界を一貫して外す安倍政権の姿勢には、安倍総理がいくら「すべての国民が」と発信しても、すべてのなかに「労働者」は入っていないのかと感じる。同時に国民会議がこれから打ち出す「政策提言」に縦軸、横軸の重層な提案が期待できるのか、1億総活躍社会を構築するための政策協議の会議なら、経済界・労働界・教育界・福祉の4辺に政治が関わる正5角形のテーブルが必要だったのではないか。

 報道では11月にも第1回の『緊急提言』をまとめるそうだが、どのような提言になるのか、様々な会議で出されている提言とどこが新たな視点で、新たな提言になるのか。国民会議の対税金投資効果がどのようにいかされるのか、期待しながら、注視したい。

 ただ正直なところ、1億総活躍推進室が何をするところなのか、未だに、筆者には分からない。大臣まで創設し、関係省庁から職員を出向させ、地方創生へのエネルギー配分は大丈夫なのか。その実効性に疑問を感じざるを得ないでいる。その疑問を払拭させて頂きたいものだ。今月29日に初会合を持つ。また、16年に1億総活躍プランを示すそうだ。来夏の参院選挙対策のアドバルーンにならないことを願っている。(編集担当:森高龍二)

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