中国の成長鈍化により企業の25.4%が自社の業績に悪影響を受ける
2015年10月22日 10:59
中国経済との相互依存関係が深まっている状況において、日中関係の改善に向けた動きは経済取引をより円滑にすると見込まれている。一方で、中国の経済成長が徐々に低下するなか、8 月の上海株式市場の急落や為替市場における人民元の基準値切り下げにみられたように、日本経済に与える影響も懸念されている。
そこで、帝国データバンクは、中国の成長鈍化が企業に与える影響について調査を実施した。それによると、中国の成長鈍化により、企業の 25.4%が自社の業績に悪影響を受けると見込んでいという。特に、中国への進出が進む「製造」「卸売」のほか、物流を担う「運輸・倉庫」でも3割台となった。
まず、中国の成長鈍化により、自社の業績にどのような影響があるか尋ねたところ、「影響はない」が5割弱で最も多かった。また、「悪影響がある」と回答した企業は 25.4%で、企業の4社に1社が中国の成長鈍化で自社の業績への悪影響を見込んでいることが明らかとなった。他方、「好影響がある」は 1.1%にとどまった。
業績に「悪影響がある」企業を規模別にみると、規模が大きいほど業績への悪影響を懸念している様子がうかがえるようだ。業界別では、「製造」、「運輸・倉庫」、「卸売」などで高く、いずれも3割以上の企業が業績悪化への懸念を持っていた。最も高い「製造」と最も低い「農・林・水産」を比較すると25.5ポイントの差があった。中国に進出している企業は製造業が全体の 42.9%を占めるなか、チャイナリスクによる倒産件数のうち卸売業と製造業が86.5%を占めている。
次に、中国の成長鈍化により具体的にどのような形で業績に影響を及ぼすか尋ねたところ、企業の2割が「売り上げが減少」を挙げたという。次いで「利益が減少」が約1割となり、中国の成長鈍化により売り上げや利益の減少を見込んでいる様子がうかがえるとしている。
とりわけ、「悪影響がある」と考えている企業 2,736 社でみると、「売り上げが減少」は 75.8%で 7 割超にのぼるほか、「利益が減少」(42.9%)も4割を上回る。さらに、「仕入れ先の見直し」や「販売先の見直し」も高くなっている。また、「中期的な経営計画の見直し」を行うという企業も1割超となっている。
そして、中国で経済活動を行うときや中国人を雇い入れるとき、どのようなリスクがあるか尋ねたところ、「品質管理が困難」が5割を超えトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「安全管理意識の低さ」が49.0%、「反日教育」が40.2%と、いずれも4割超で続いた。
他方、中国経済と関わりのない企業では、「反日教育」が45.7%と全体を5.5ポイント上回っている。企業からも、「取引先の中国進出が鈍化し、現地賃金の上昇、商慣習の違い、反日感情などから撤退を検討しても、労働組合と法体制の違いにより、実際撤退できないケースが多く取引先の大きな経営課題」(信用金庫、東京都)など、中国でビジネスを行っている他社の状況から、中国との取引関係の困難さを指摘する意見もあった。
この調査によると、中国と経済活動を行う際に生じるリスクとして、特に品質・安全管理を懸念していることも明らかとなった。すでに中国と経済関係を有している企業では賃金水準の上昇を注視する一方、中国経済と関わりのない企業では「反日教育」をリスクと捉える傾向があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)