嫌なことを避ける学習には、脳の2つの領域が役割を分担する―筑波大・川合隆嗣氏ら

2015年10月19日 21:39

 筑波大学の川合隆嗣研究員らによる研究グループは、動物が嫌なことを避ける学習をしているときに、2つの脳領域が役割を分担して活動していることを発見した。この成果は、脳が学習するメカニズムを理解することや、学習の障害に関わる神経基盤を解明することにも繋がることが期待される。

 私たちは、ある行動をした結果、嫌なことが起こったら、次はその行動を避けるように学習する必要がある。先行研究によって、嫌なことが起こったときには、脳内の複数の領域が強く活動することがわかっているものの、そうした複数の脳領域がどのように協調して嫌なことを避ける学習を実現しているのかは、明らかなっていなかった。

 今回の研究では、認知機能が発達したマカク属のサルを被験動物として、外側手綱核と前部帯状皮質の神経細胞活動を記録する実験を行なった。

 まず、サルに対して、嫌な経験に基づいて、それを避けるように学習させた。その結果、サルは無報酬が繰り返されたときに、報酬を貰えるよう選択を切り替えており、外側手綱核と前部帯状皮質の多くの神経細胞が、報酬が得られなかったとき(すなわち、嫌なことが起こったとき)に強い興奮性の活動を示していることが分かった。

 そして、外側手綱核は嫌なことが起こったことをいち早く知らせるような役割を示し、前部帯状皮質は現在や過去に起こった嫌な経験を記憶して、将来の行動を適切に変えるような役割を示すことが分かった。

 研究メンバーは「今後は、脳内の二つの領域の役割分担を明らかにしていくことによって、嫌なことを避ける脳のはたらきの全体像を解明していくことが求められます」とコメントしている。

 なお、この内容は「Neuron」に掲載された。論文タイトルは、「Roles of the lateral habenula and anterior cingulate cortex in negative outcome monitoring and behavioral adjustment in nonhuman primates」。

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