【百貨店、専門店業界の3~8月期決算】「インバウンド消費」は来年2月の春節(旧正月)も続いてくれるか?
2015年10月15日 10:45
■専門店には苦戦から脱しきれない企業がある
小売業の百貨店、専門店業界の主要各社の3~8月期(中間期)決算がほぼ出揃った。
百貨店は、高島屋<8233>が営業収益1.8%増、営業利益13.1%増、純利益15.2%増の2ケタ増収。セブン&アイHD<3382>傘下の西武・そごうは営業収益0.2%減、営業利益36.0%減と悪かった。決算期はずれるが三越伊勢丹HD<3099>の4~9月期(中間期)見通しは、売上高は3.2%増、営業利益は2.5%増、純利益1.7%減の見込み。阪急百貨店と阪神百貨店のH2Oリテイリング<8242>の4~9月期(中間期)見通しは、売上高22.7%増、営業利益2.5%増、純利益44.7%減の見込み。7月に上方修正を行っている。
専門店はファーストリテイリング<9983>が8月期本決算を発表し、売上収益21.6%増、営業利益26.1%増、最終当期利益47.6%増。並みの企業なら万々歳な2ケタ増収増益決算だが、営業利益がアナリストの市場予測に及ばなかったため株価は決算発表後2日間で13.1%も下落して日経平均の足を引っ張った。周囲の期待が過大気味の優等生はつらい。「無印良品」の良品計画<7453>の3~8月期決算は、営業収益は19.3%増、営業利益は38.1%増、純利益は49.7%増。前期の通期はヨーロッパが不振で最終減益だったが、純利益は大きく持ち直した。カジュアル衣料のしまむら<8227>は売上高4.8%増だが営業利益6.6%減、純利益5.9%減で、値引きによる粗利率低下、採算の悪化が続いて増益見通しが一転減益となった。
靴のABCマート<2670>は訪日外国人観光客の「インバウンド消費」が依然好調で、売上高11.5%増、営業利益1.7%増、純利益3.7%増と増収増益を維持。一部店舗の減損処理や固定資産の売却損を織り込んで利益は1ケタ増だったが、中間期の1株当たり配当を当初予想の50円から60円に10円増配した。家具のニトリHD<9843>は売上高5.4%増、営業利益2.1%減、純利益は3.4%増だった。店舗数は前年同期比51店舗増で出店攻勢が続く。シャープ<6753>の大阪の本社ビルを取得して大型店舗に改装する。既存店売上高は0.4%減だったが、夏物の寝具の販売が好調。ホームセンターのDCMHD<3050>は営業収益2.4%減、営業利益0.4%減、純利益0.4%減と、前期の通期と比べると営業利益だけがプラスに持ち直したが依然苦戦。期待した夏場が天候不順で空振りだったという。外食の吉野家HD<9861>は売上高4.5%増、営業利益33.3%減、純利益32.5%減で増収、大幅減益。それでも原価率は当初予想ほど上昇せず、純利益は税効果の見直しもあり当初予想の6倍以上になった。
■通期は百貨店は快晴でも、専門店はまちまち
百貨店、専門店業界の2016年2月期の通期見通しは、高島屋は上方修正し、西武・そごう、H2Oリテイリングは2ケタ営業増益を見込んでいる。専門店は「無印良品」の良品計画が絶好調。下方修正しなかったしまむら、DCMHDは下期どこまで突っ張れるか?
百貨店は、高島屋は営業収益を1.4%増から2.2%増の9330億円に、当期純利益を3.2%増から5.0%増の237億円にそれぞれ上方修正。営業利益は6.2%増の340億円だが連続増収増益を目指す。西武・そごうも連続増収増益の営業収益2.8%増、営業利益17.3%増を見込んでいる。三越伊勢丹HD<3099>の3月期通期見通しは、売上高は2.2%増、営業利益は5.8%増、当期純利益16.4%減の見込み。H2Oリテイリング<8242>の3月期通期見通しは売上高6.5%増、営業利益7.7%増、当期純利益は12.2%増の見込みとなっている。
大手百貨店は引き続き訪日外国人観光客の「インバウンド消費」が旺盛だったが、夏に中国の金融・株式市場が変調をきたし、今後は中国経済の減速の影響が懸念され不透明。10月の国慶節休暇は落ち込まなかったが、2月期決算でも3月期決算でも今期中に含まれる2016年2月7~13日の春節(旧正月)休暇の結果が今から心配される。
専門店チェーンの通期見通しはまちまち。ファーストリテイリングの2016年8月期通期見通しは営業収益は13.0%増、営業利益は21.6%増、最終当期利益は4.5%増と前期を下回って控えめ。良品計画の2016年2月期見通しは営業収益13.7%増、営業利益34.2%増、当期純利益20.9%増。営業利益は連続2ケタ増益、4期連続最高益の見通しと絶好調。しまむらは中間期は減益決算だったが、通期は売上高は6.3%増で増収幅を拡大し、営業利益24.9%増、当期純利益26.9%増と、前期の2ケタ減益からのV字回復で3期ぶりに最高益を更新するという強気の業績見通しを変えていない。下期はどんな秘策を繰り出すのか?
ABCマートは通期の業績見通しを修正し、売上高は7.5%増から10.9%増に上方修正、営業利益は2.8%増で据え置き、当期純利益は5.9%増から4.1%増に下方修正した。それでも期末配当予想は1株当たり50円から60円に上方修正している。通期で120円。ニトリHDの通期見通しは売上高6.6%増、営業利益7.1%増、当期純利益5.2%増で修正なし。29期連続の増収増益を目指す。DCMHDは同業のサンワドーを7月に完全子会社化し、営業収益を1.9%増から3.6%増に上方修正した。営業利益は8.3%増、当期純利益は13.2%増で、依然として前期の減収減益、最終2ケタ減益からのV字回復を見込んでいるが、暖冬が予想される秋冬商戦で挽回できるか。吉野家HDの通期見通しは売上高2.8%増、営業利益は14.7%減で据え置きながら、当期純利益は15.0%減を6.3%増に上方修正した。原価率の上昇が抑えられたことと、税効果の見直しによるもの。(編集担当:寺尾淳)