精子の正常な運動に必須の酵素を発見―男性避妊薬の開発につながる可能性=筑波大・柴小菊氏ら

2015年10月15日 21:34

 筑波大学の柴小菊助教・稲葉一男教授は、大阪大学との共同研究により、精巣で発現する脱リン酸化酵素である精子カルシニューリン(PPP3CC/PPP3R2)が精子の正常な運動制御と受精能力に必須であることを明らかにした。研究成果は、不妊症の原因究明や診断法、男性避妊薬の開発に応用できる可能性があるという。

 精子カルシニューリンを欠損した精子は、尻尾の中片部だけが屈曲しなくなることで、卵への受精に必要な正常な運動ができなくなる。また、カルシニューリンは全身に存在する脱リン酸化酵素として広く知られている。

 今回の研究では、精巣特異的に発現する精子カルシニューリン遺伝子を破壊した雄マウスが不妊になること、ヒトにも精子カルシニューリンが存在し、脱リン酸化酵素活性を有することを明らかにした。また、雄マウスにカルシニューリン阻害剤を2週間投与すると不妊となることと、投与を中止すると1週間で生殖能力が回復することを確認した。

 男性用の経口避妊薬はこれまで実用化されていないが、精子カルシニューリンを特異的に阻害できれば、即効性があり、可逆的な男性避妊薬の開発に繋がることが期待される。

 なお、この内容は「Science」に掲載された。論文タイトルは、「Sperm calcineurin inhibition prevents mouse fertility with implications for male contraceptive」。

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