「時間の長さ」を感じる際に活動する脳領域を明らかに―阪大・林正道氏ら
2015年10月11日 15:27
生理学研究所と大阪大学の林正道・日本学術振興会特別研究員らによる研究グループは、時間の長さを捉える際の脳の活動の一部を解明した。
これまで、線の傾きや運動方向といった空間的な特徴は、視覚野のニューロン(神経細胞)群によって表現されていることが分かっていたが、「時間の長さ」をヒトの脳がどのように表現しているのかは明らかになっていなかった。
今回の研究では、ヒトの脳に特定の時間長の刺激に対して選択的に発火するニューロン群が存在するのかどうかを、機能的磁気共鳴画像(fMRI)法とfMRIアダプテーションと呼ばれる実験パラダイムを用いて調べた。
その結果、同一の時間長(数百ミリ秒)の刺激が繰り返し呈示されると、異なる時間長の刺激が呈示された場合に比べて右縁上回の活性化が弱まることが分かった。
また、このような右縁上回の活性化の弱まりは、被験者が刺激の時間長に注意を向けているかどうかとは無関係に起こること、さらに他の刺激の特徴(刺激の形状)の反復呈示に対しては活性化が弱まらないことも明らかになった。
これらの結果は、右縁上回に特定の時間長に選択的に応答するニューロン群が存在する可能性を強く示唆している。
研究チームは今回の研究成果について、我々の脳がどのようにして時間の経過を把握、学習し、さらにそれを未来のイベントの予測に役立てているかを知るための基礎となる重要な発見だとしている。将来的には、パーキンソン病、統合失調症、注意欠陥・多動性障がい、自閉症などの病態理解や、意思決定の脳内メカニズムの解明に繋がることが期待される。
なお、この内容は「PLOS Biology」に掲載された。論文タイトルは、「Time adaptation shows duration selectivity in the human parietal cortex」。