伊アルカンターラ会長が来日―日本でのプレゼンスさらに高める
2015年10月1日 14:22
人工皮革素材「アルカンターラ」の製造・販売を行う伊アルカンターラ社がきょう30日、ブランド戦略を都内で発表した。アンドレア・ボラーニョ会長兼CEOは、カスタマイズ性の高さやサステナビリティーへの取り組みを強みに、日本市場におけるプレゼンスをさらに高めていくことを強調した。
「アルカンターラ」は、1970年代に東レが開発した「ウルトラスエード」と同じテクノロジーを用い、東レ子会社であるアルカンターラ社が人工皮革の最高級ブランドとして、メイド・イン・イタリーにこだわりながら、環境に配慮した開発・改良を重ねてきた。同社の総売上高の約7割を占める自動車分野をはじめ、家電やインテリア、ファッションの分野でも事業を拡大。イタリア国外への市場開拓も積極的に進めたことで、2014年度の売上高は1億2,380万ユーロと5年間で約2倍となった。現在、売り上げの9割はイタリア国外への輸出。近年は米国・中国市場での伸びが顕著で、2015年度売上高は前年比25%増の1億5,500万ユーロを計画している。
また今年7月、ブランド・コンサルティング会社インターブランドにブランド評価を依頼したところ、9年前の15倍に当たる1億ユーロに達した。ボラーニョ会長は高評価の背景として、グローバル化や独自の研究開発に基づいた技術力、高度なカスタマイズに対応するテイラーメイド型ソリューションとともに、サステナビリティー(持続可能性)への取り組みをあげた。Co2削減や、国連グリーンプロジェクトへの支援、自動車エコシステムをテーマにした国際シンポジウムの開催などを行っており、「透明性を担保していくことが最も大切」だとして、サステナビリティー・レポートの作成も自発的に行っている。売上拡大とともに、「世界に対してブランド認識を高める努力をしていきたい」と強く語った。
日本市場へは、自動車分野への参入を機に2013年に本格上陸。日本の自動車分野では、「ウルトラスエード」が競合になり得るが、ボラーニョ会長は、「アルカンターラは、技術面やビジネスにおいて独自性を築いており、またメイド・イン・イタリーであることが最大の価値だ。同じセクションにおいて協力体制を敷くことは、価値の希釈化につながる。ウルトラスエードとの差別化を図っていくことが重要であり、これは東レの同意も得ている」とその方向性を示した。
現在は、技術やデザインの担当者と交渉を進めている段階。「自動車業界では、開発からリリースまで2年を要するのが一般的だ。日本でのプレゼンスを示せるのはこれからになるだろう」と分析した。
ファッション分野では、2014年に「ワイズ」、2015年に「ハナエ モリ」といった日本のブランドとコラボレーションを行ったほか、伊勢丹新宿本店で10月6日まで開催しているイタリアン・フェアでは、米出身のイラスレーター、レベッカ・モーゼスの作品展示やアイテムの販売を行っている。今後も世界戦略と同様、様々なクリエイターと手を組むことで、アルカンターラの表現力の高さを示すとともに、日本での露出を高めていく考えだ。
「日本の消費者は教養があり、より良いものを求めようとする訴求力や、品質を見極める力があると感じている。私たちの持つ機能性や品質、デザインをもって、日本の消費者の求めるすべてに応えることができると自負している」とボラーニョ会長。日本進出から2年を経て、日本市場のポテンシャルの高さと、事業規模拡大に改めて期待を寄せた。