日本企業連合、タイ・バンコクの都市鉄道へ、車両出荷 独シーメンスの牙城を崩せるか
2015年9月22日 11:46
総合車両製作所(J-TREC)とJR東日本<9020>は9月7日、タイ・バンコクの都市鉄道「パープルライン」へ車両の出荷を開始したと発表した。横浜市鶴見区の大黒埠頭から、まず2編成6両が送り出された。2016年1月までに、21編成63両を輸送する予定だ。
バンコクメトロ社が運営するパープルラインは、バンコク北部バンスー地区から北西郊外バンヤイ地区を結ぶ約23キロメートルの路線。日本政府の円借款でタイの運輸交通局が進めるプロジェクトで、16年8月の開業を目指している。都市部と郊外を結ぶ新しい駅が作られる予定で、深刻な問題となる大渋滞の解消が期待されている。
13年11月、丸紅<8002>と東芝<6502>が出資する共同事業体を通じ、パープルラインの鉄道システムと10年間のメンテナンス事業を受注した。東芝、丸紅がJR東日本とともに設立したメンテナンス会社が担当し、日系社員も送り込まれることになった。日本の企業連合によるこうしたメンテナンス体制が受注の決め手となったと見られる。
車両の製造はJ-TRECが受注した。J-TRECのステンレス車両「sustina(サスティナ)」は、省エネルギー性・安全性・保守性を売り物にしている。鋼製の車両と比較して車体重量比で3割程度も軽いため、消費電力量を削減できる。こうしたコストダウンのメリットが評価された。
サスティナは、13年に東京急行電鉄の5050系で採用されたほか、JR東日本の烏山線や仙石東北ラインにもサスティナをベースにした車両が導入されている。さらに今秋から営業運転が始まる山手線の新型車両E235系は、サスティナの量産型第1号となる。
一方、19年4月の営業開始を目指すタイの都市鉄道「レッドライン」の信号システムや車両は、住友商事<8053>、日立製作所<6501>、三菱重工業<7011>の3社連合が受注している。
これまで、タイの高架鉄道や地下鉄の製造は、独シーメンスが独占していたが、日本は企業連合を組むことによって総合力を高め、シーメンスの牙城に迫ろうとしている。(編集担当:久保田雄城)