【コラム】河野統合幕僚長には証人喚問に応じる責任があるのでは

2015年9月12日 21:40

 河野克俊統合幕僚長と米国のデンプシー統合参謀本部議長が昨年12月18日、ワシントンDCで意見交換した「アジア太平洋地域の安全保障環境、日米同盟の深化」の中身はどんな内容だったのか。会談で「来年夏までには(安保法案は)終了する」とした発言があったかどうか。法案の国会審議入り前に、こうした発言があったとすれば罷免に値する重大問題だ。河野統合幕僚長には証人喚問に応じる責任があると言わなければならない。

 この問題、防衛省統合幕僚監部、2014年12月19日の「河野統合幕僚長と米国のデンプシー統合参謀本部議長による共同プレス発表」では「両者は日本の防衛と地域の平和と安全のため、日米共同対処の実効性の向上に努めていくことで合意した」とのみ公表するにとどまり、詳細はない。

 日本共産党の仁比聡平参院議員が今月2日の参院安保特別委員会で示した「統合幕僚長の会談記録」に、中谷元防衛大臣は「同じタイトルの資料はあったが、委員会で提示された内容の資料は存在が確認できなかった」と、統合幕僚長が会談の際に安保法案は「来年夏までに終了する」と伝えたとする会談記録の資料の存在が確認できていないとして、発言したかどうかの事実関係にも答えないでいる。

 しかも、当の河野統合幕僚長は「Qこの文書を見た記憶は? A答えを控える。 Q夏までに終わらせると発言した記憶は? A答えを控える。 Qご自身の発言なので明らかに間違いだったら、完全に虚偽のものだとすぐ分かると思うがどうか? A答えを控える」(志位和夫委員長がツイッターで紹介している部分から)。

 答えを控える理由は「会談内容を明らかにすれば、米国との信頼関係を損なうことになりかねない」などということになるのだろうか。都合の悪い情報は常に米国との信頼関係などを理由に隠ぺいし、逆に米国側の情報開示で日本側の時の政府の問題が後日明らかになるのが常だ。

 米国・米軍要請にいったいどこまで安倍政権は答えることを約束してきているのか。少なくとも、憲法違反の疑いがある政府の安保法案を法案審議もしていない昨年の段階で「来年夏までには終了する」と米軍トップに伝えたことが事実なら、国会を蔑ろにしている大問題だ。安倍政権の驕りを反映するものとも受け取れる。

 生活の党の山本太郎共同代表は今年8月19日の参院安保特別委員会で「スターズ・アンド・ストライプス(星条旗新聞)」が今年5月13日号に報じた内容をとりあげ「アメリカの防衛予算は既に日本の自衛策を当てにしている。2016年のアメリカ防衛予算は日本政府が後押しする新法案、同盟国防衛のための新法案を可決するという前提に仮定している。これが通るから。あと、金のことよろしくねって」と皮肉った。

 山本共同代表は「だから、4万人もアメリカは軍関係者を削減した」と指摘し「最新の(米国の)防衛予算はもう削減がはっきりしている。この肩代わり、リバランスするのは日本ですよね」と提起した。

 こうした内容にも符合する政府、自衛隊の一連の動きは、国会、国民より、米国の要請にいかに国民を説得し答えていくのか、そちらが主眼になっているような気がしてならない。

 そうではないということであれば、少なくとも、河野統合幕僚長はデンプシー統合参謀本部議長との会談の中で「来年夏までには終了する」というようなことは語っていないと、証人喚問に応じ、国会の場で証言すべき。

 この発言の有無を語ることが、日米間の信頼関係を削ぐことになるとは到底思われない。すべての会談内容を開示せよと言っているわけではない。

 「来年夏までには終了する」とした発言があったのかどうか、その事実だけでも明確にする責任はあるだろう。内部資料として国会に提示し責任追及した共産党はもちろん、民主、社民など野党は、安保法案審議のうえで、会談の事実関係は明確にすべきだと求めており、それは安保法案に不信や懸念を抱いている多くの国民も同じ思いであることを認識すべきだ。

 河野統合幕僚長が統合幕僚長としての責任を持ち、国会の証人喚問に応じることを期待したい。中谷防衛大臣も安倍晋三総理も与党も、これに協力すべき。でなければ、政府・与党、自衛隊への不信感は広がることになろう。災害時に命がけで人命救助にあたっている自衛官らの努力と世間の評価を政府・与党・自衛隊トップが無にする行為は避けなければいけない。(編集担当:森高龍二)

関連記事

最新記事