M&Aは海外を優先する企業が6割超 為替に左右されず積極的に取り込む企業が多数
2015年9月11日 11:39
GCAサヴィアンは、M&Aを積極的に検討しているクライアントを対象に、M&Aに関するアンケート調査を実施した。この調査は、経営者層が自社の戦略、M&Aに対してどのように考えているのか、継続して調査することを目的としている。対象企業は上場企業および非上場有力企業、調査対象者は経営者および経営企画担当役員など。調査方法はインターネット回答方式で、期間は2015年7月14日~28日。有効回答数は430名/239社(回収率24.4%/45.0%)だった。
まず、6月にコーポレートガバナンス・コードの適用が開始されたことを受けて、自社への影響について聞いた。「プラスの影響が大きい」と考える回答は29%、約3割とネガティブに捉える回答を大きく上回ったものの、「どちらともいえない」の回答が60%と過半数を占めた。先行き不透明感もあり現段階では判断保留とする回答が大半だった。
次に現在の経済環境の中、優先順位が高い順を聞いたところ、投資の最優先は「M&A」が46%、第2位「設備投資」が36%とこれまでと同様の順位であるが、特に設備投資を優先する回答が2014年の26%から大幅に上昇した。一方、2014年調査で増加基調にあった「株主還元」が一転して11%から6%へと減少。コーポレートガバナンス改革が進む中で、短期的施策よりも長期的視点に立ち、本業の企業価値向上に軸足を移す傾向がうかがえるとしている。
また、国内と海外のM&Aどちらを優先するのかを聞いたところ、「海外M&A」をより重要視する回答が61%と6割を超えた。為替に左右されずに、今後もM&Aを通じて海外市場を積極的に取り込んでいく方針であることがわかるとしている。また、「1年以内にM&Aの計画を予定」していると回答した企業は全体の41%に上り、案件次第の取組みを想定している「どちらともいえない」51%を合わせると9割超がM&Aの好機をうかがっていることになる。M&Aが企業の特殊なイベントではなく日常化しつつある傾向が示された結果としている。
そして、M&Aの評価に関して、「のれん」の減損判定を行うタイミングについて聞いた。「計画対比で利益が30%減」が10%、「計画対比で利益が50%超減」が23%と、必ずしも赤字や純資産の毀損ではなく、計画との対比でのれんの減損判定を行うべきとの意見も得られた。M&Aの評価にあたっては計画達成度のモニタリングを重要視していることがうかがえるとしている。
最後に、被買収会社に対してコーポレートガバナンスの観点からリスク管理体制を整備しているかを聞いたところ、海外M&Aを実施した企業の75%が、被買収会社のリスク管理体制の整備は「十分とはいえない」「整備されていない」と回答。最近、グローバル展開を積極的に推進する大企業における、海外買収企業子会社の不正会計による巨額簿外債務の発覚、破産手続き開始の報道などは海外企業を買収した企業に注意喚起を促すこととなったとしている。
GCAサヴィアンでは、買収前に見抜くことが困難な事態にどう対処すべきか、海外企業買収後のリスク管理とガバナンス体制の強化に大きな課題が残されていると分析している。(編集担当:慶尾六郎)