「マタハラ」認知率9割に向上も、状況の改善進まず

2015年9月10日 12:25

 妊娠・出産を機に、女性が職場で不当な扱いを受ける「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」。連合非正規労働センターが今年8月、過去5年以内に在職・妊娠経験がある20~40代女性654人を対象にアンケートを行なったところ、「マタハラ」の認知率は93.6%と、13年の6.1%、14年の62.3%から大きく向上した。一方、マタハラをめぐる「状況の変化を感じない」女性は63.5%と、環境の変化が変わらないことを指摘する向きも多い。

 妊娠時の雇用形態をみると、会社役員や公務員を含む「正規社員」が4割、パート・アルバイト、派遣社員などの「非正規社員」が6割だった。一方、現在の職業を聞いたところ、「公務員」の割合は約8%でほとんど変わらないが、民間企業の「正社員」が3割から2割に減少している。現在の雇用形態が「パート・アルバイトや派遣社員」は4割で、「専業主婦」が約3割に増えているのが特徴だ。妊娠や出産をきっかけに、退職して家庭に入った女性が目立つ。

 意識調査の結果をみると、女性たちは「仕事と家事・育児の両立」に大きな不安を抱えているようだ。仕事をしながら妊娠が分かったとき、「仕事と自分の生き方」や「家計への影響」なども踏まえて自分の心境に近いものを選んでもらったところ、「嬉しくて素直に喜べた」が44%だったのに対し、「嬉しかったが、同じくらい不安を感じた」も40%、「嬉しかったが、それ以上に不安を感じた」「不安しか感じなかった」の合計は15%で、過半数の女性が、仕事をしながら妊娠が分かった時に「不安」を感じている。

 実際のマタハラ被害は28.6%に達した。最も多いのは「妊娠・出産の告知後・産休中・産休明け1年以内に、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導などをされた」で、正規社員(8.8%)よりも非正規社員(13.2%)の多さが際立つ。逆に、「妊娠中や産休明けなどに心無い言葉を言われた」は正規社員(12.3%)、非正規社員(5.1%)で、正社員の方が多かった。そもそも非正規社員は妊娠をきっかけに退職することが多いため、このような結果になるのだろう。

 調査では、育休取得を考えた女性の実に4割が「育休を取得したかったが取得できなかった」と答えている。派遣など有期契約労働者でも条件を満たせば育休取得ができることについては、8割弱が「知らない」と回答した。制度の整備は進みつつあるが、周囲の理解や働き方の改革も含めた「意識の変化」は、まだ追い付いていない。(編集担当:北条かや)

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