東大、オキシトシンの投与が自閉スペクトラム症を改善させることを明らかに
2015年9月9日 23:26
東京大学の山末英典准教授らは、オキシトシン経鼻剤の投与によって自閉スペクトラム症の中核症状が改善することを発見した。
自閉スペクトラム症は、「対人場面での相互作用とコミュニケーションの障害」「同じ行動パターンを繰り返して行なうことを好み変化への対応が難しい」といった症状見られ、100人に1人程度の割合で発症する。
今回の研究では、自閉スペクトラム症と診断された20名の成人男性を対象に、オキシトシン経鼻剤を毎日2回ずつ連続して6週間使用したところ、オキシトシン投与前後ではプラセボ投与前後に比べて、対人場面での相互作用の障害という中核症状の改善が有意に認められた。また、内側前頭前野と呼ばれる脳の領域の機能も改善していたが、この脳機能の改善が強い参加者ほど中核症状の改善効果も強く認められることが明らかになった。
オキシトシンは、脳から分泌されるホルモンで、女性での乳汁分泌促進や子宮平滑筋収縮作用が知られており、動物では親子の絆を形成する上で重要な働きをすることが知られている。また、健常な成人男性への経鼻スプレーを用いたオキシトシンの投与によって、他者と有益な信頼関係を形成して協力しやすくなること、相手の表情から感情を読み取りやすくなることなどがこれまでに報告されていた。
現在、本臨床試験の結果を114名の新たな参加者で確認するために、東京大学、名古屋大学、金沢大学、福井大学の4大学が連携して、臨床試験を行っている。
なお、この内容は「BRAIN」に掲載された。論文タイトルは、「Clinical and neural effects of six-week administration of oxytocin on core symptoms of autism」。