ボーイング社の新型宇宙船CST-100、名前は「スターライナー」に

2015年9月6日 19:18

 米ボーイング社は9月4日、開発中の宇宙船CST-100を「スターライナー」(Starliner)と命名すると発表した。また、ケネディ宇宙センターにある同機の組み立てや整備、打ち上げ準備を行う施設も公開し、2017年に予定している宇宙飛行士を乗せた初飛行に向けて、準備が進んでいる様子をアピールした。

 スペース・シャトルの引退以降、米航空宇宙局(NASA)は月や火星、小惑星などのより遠い目標に集中する代わりに、国際宇宙ステーション(ISS)のような地球低軌道への宇宙飛行士の輸送を民間企業の手にゆだねるという路線をとっており、その中でボーイング社とスペースX社の2社が、新しい宇宙船の開発にあたっている。

 スターライナーはスペース・シャトルのような翼はもたず、アポロ宇宙船のようなカプセル形をしている。最大で7人の宇宙飛行士が乗ることができ、またISSへ飛行では最大4人を輸送することができる。打ち上げには、ロッキード・マーティン社が製造し、ボーイング社と共同で運用している「アトラスV」ロケットが使われる。

 スターライナーという名前は、世界初の与圧キャビンを持つ商業用旅客機ボーイング・モデル307「ストラトライナー」や、最新の中型ジェット旅客機ボーイング787「ドリームライナー」に連なる意味合いをもっている。

 現在のところ、スターライナーは2017年2月に緊急脱出システムの試験を、同年4月に無人での試験飛行を行い、そして同年12月に、宇宙飛行士を乗せた初飛行に臨むことになっている。またすでに、ことし5月27日には、NASAからISSへの宇宙飛行士の商業輸送契約を受注している。

 米国は現在、ISSへの宇宙飛行士の輸送を、ロシアのソユーズ宇宙船に依存しているが、スターライナーと、スペースX社の「ドラゴンV2」宇宙船の運用が始まれば、この依存から抜け出すことができる。さらに、ソユーズは3人乗りであるため、通常ISSは3人から6人体制で運用されているが、スターライナーやドラゴンV2の運用が始まれば、7人体制での運用ができるようになる。

 またボーイング社とNASAはこの日、NASAのケネディ宇宙センター内に建設が進んでいる、スターライナーの組み立てや整備、打ち上げ準備を行う施設も公開した。この施設は「Commercial Crew and Cargo Processing Facility」(商業有人・貨物整備施設)の頭文字から「C3PF」と名付けられている。

 C3PFはもともと、スペース・シャトルのオービターの格納庫(OPF)として使われていた場所で、現在スターライナー向けに改修工事が進められている。工事の完了はことし12月に予定されている。

 また、同施設内におかれた、スターライナーの構造試験機も公開。同機は地上での各種試験に使われた後、2017年2月に予定されている緊急脱出システムの試験でも使われることになっている。

 打ち上げは、ケネディ宇宙センターに隣接する、米空軍のケープ・カナヴェラル空軍ステーションの第41発射台(SLC-41)から行われる。こちらも現在、打ち上げに必要な施設の建設が進められている。

 ボーイング社のジョン・エルボン副社長は「今からおよそ100年前、私たちは商業航空の夜明けを迎えました。そしてきょう、私たちはNASAの支援のもと、新たなる商業宇宙時代の夜明けを迎えています」と語った。

 NASAのチャールズ・ボウルデン長官は「商業有人輸送は、私たちの火星に向けたミッションにとって必須となる部分です。また、ふたたび私たちの国から、私たちの国の宇宙飛行士を打ち上げ、この地球上で最も素晴らしい国にするため、35の州と350の米国企業が一丸となって働いています」と述べた。

■Boeing Revamps Production Facility for Starliner Flights | NASA
http://www.nasa.gov/feature/boeing-revamps-production-facility-for-starliner-flights

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