東大など、次世代素材「グラフェン」を高速・高効率に得る手法を開発―大量生産の実現に期待
2015年9月6日 23:18
東京大学の相田卓三教授、松本道生大学院生らの研究グループは、新しく合成開発したイオン液体とマイクロ波の組み合わせを用いることで、革新材料として注目される炭素シート化合物「グラフェン」を、天然グラファイトから30分で剥がす手法を開発した。
グラフェンは、導電性、機械的強度、熱伝導度などの物性を併せ持つ、「奇跡の材料」として、多大な注目を集めている。近年、このグラフェンを用いた基礎・応用研究を通じて既存の技術を圧倒的に凌駕する数々の成果が報告されているが、高品質グラフェンの大量生産法が確立されていないため実用化には至っていない。
今回の研究では、1分子内に2つのイミダゾリウム部位を持つイオン液体分子IL2PF6を設計・合成し、このイオン液体に原料でグラファイトを25mg/mLの濃度で懸濁させ、CEM社のマイクロ波合成装置でマイクロ波を30分間照射した。その結果、黒色の粉末固体を得ることに成功し、収率93%、単層選択性95%、純度は原料のグラファイトとほぼ変わらないことが明らかとなった。
これらの結果は、イオン液体とマイクロ波という組み合わせがグラフェンの大量生産に大きな指針になることを示唆しており、今後、より複雑・高機能なナノ構造体に関する技術の進歩と次世代エレクトロニクス分野での応用に貢献することが期待される。
なお、この内容は「Nature Chemistry」に掲載された。論文タイトルは、「Ultrahigh-throughput exfoliation of graphite into pristine 'single-layer' graphene using microwaves and molecularly engineered ionic liquids」。