最も「人手不足」な業界は放送、情報サービス業界 マイナンバー制度に向け正社員の不足感が高まる

2015年8月23日 19:53

 景気回復が緩やかに続き、リーマン・ショックによる不況で急落した有効求人倍率は年々増加しているなか、8 月に解禁された採用活動も活発になるなど、企業において人材の獲得競争が依然続いている。また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2014年5月に発表した労働力需給の将来推計によれば、経済成長と労働参加が適切に進まない場合、2030 年には労働力人口が最大で約872 万人減少すると予測しており、将来的な「人材」の減少・不足を懸念する見方が広がっているという。

 このような中、帝国データバンクは、人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。それによると、企業の36.2%で正社員が不足していると回答したという。

 まず、現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(「該当なし/無回答」を除く)、正社員について「不足」していると回答した企業は 36.2%となり、前回調査よりも 1.6 ポイント減少した。現在の正社員数が「適正」と判断している企業は 50.5%、「過剰」と判断している企業は 13.3%となった。

 「不足」していると回答した企業を業種別にみると、「放送」が 72.3%で最も高く、2015年1月時点の4位からトップへ浮上した。以下、「情報サービス」(60.6%、前回調査1位)、「医薬品・日用雑貨品小売」(60.0%、同3位)が6 割台になったほか、「飲食料品小売」(53.4%、同21位)、「メンテナンス・警備・検査」(52.5%、同10位)、「飲食店」(51.3%、同19位)、「建設」(51.0%、同 2 位)がいずれも 50%を超え、上位10業種のなかで6業種をサービス業が占めた。

 前回調査より引き続き上位に入った「情報サービス」では、「マイナンバー案件による引き合いが好調で、人員が不足している」(ソフト受託開発、東京都)や「受託案件はまずまずあり、取引先への技術者の派遣要求も強い」(ソフト受託開発、愛知県)などIT人材が不足するなか、10月から開始するマイナンバー制度対応へのIT需要が増えることで、正社員の不足感が高まっている。

 前回調査と比べて人手不足感が急拡大している業種では、景気回復による賃金の上昇を受け、国内旅行需要が増加しているほか、円安の好影響によりインバウンドによる消費の増加が影響したこともあり、「飲食料品小売」(前回調査比19.2ポイント増)と「飲食店」(同16.3ポイント増)の2業種が、前回より10ポイント以上増加した。

 一方で、前々回調査で1位、前回で2位だった「建設」は今回の調査では7位(同3.6 ポイント減)と順位を大きく下げた。東北の堅調な復興需要をはじめ、新幹線などの交通インフラ整備による建設需要、景気回復を受けて不動産投資需要が増大した前回調査に比べ、とくに土木工事の公共工事需要が落ち着いたことが、「建設」の人手不足感を緩和した要因とみられるとしている。

 また、人手不足が深刻とされる老人介護や保育所などを含む「医療・福祉・保健衛生」は13位(45.0%、前回調査14位)と上位10業種には入らなかったが、「老人ホームへの入居需要が増加傾向」(老人福祉施設、東京都)であることや、「待機児童が多く、その解消のため、保育所に対する需要が旺盛である」(保育所、福岡県)ことが、人手不足の要因となっているとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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