海洋研究開発機構、福島第一原発沖の放射線セシウムの様子を明らかに
2015年8月23日 22:32
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、福島第一原子力発電所の南東沖の大陸斜面で、放射性セシウムが付着した海底堆積物が沖合に向かって水平移動している様子を捉えることに成功した。事故から約3年が経過した2014年7月でも放射性セシウムが検出されており、特に台風が通過した後などは、海中を大陸斜面まで素早く水平輸送されてくる様子がうかがえたという。
福島第一原発の事故によって、大量の放射性物質が外部へ放出され、その多くが汚染塵や汚染水として西部北太平洋に流れた。
今回の研究では、海洋に流れた放射性物質の移動、拡散状況、海水・海洋生物・沈降粒子・海底堆積物への分配状況を把握するため、2011年7月より、原発から南東へ約100km離れた大陸斜面の1点の水深500mと1000mに、時系列式沈降粒子捕集装置(セジメントトラップ)を設置し、粒状物の時系列捕集を行ってきた。
その結果、福島第一原発由来の放射性セシウムが水深500mと水深1000mの地点で、観測開始直後の捕集粒状物から検出された。そして、放射性セシウムの沈降量と濃度は2011年9月~10月に最大となり、その後、12月頃および2012年2月~3月頃にも増加し、それ以降は徐々に減少していることが明らかになった。また、2012年9月~10月と2013年9月~10月にも放射性セシウムフラックスと濃度の小規模な増加が観測された。
特に2013年9-10月の場合は、東電福島原発から100km圏内を複数の台風が通過しており、流れ場の変化で浅海域の海底堆積物がより多く再懸濁し、海流によって観測点F1まで水平輸送されやすい状況にあったと推定された。
今後は、放射性セシウム濃度が低下するメカニズムである、海水への再溶解、底生生物による堆積物の攪乱による希釈効果に加え、本観測研究による海底堆積物の再懸濁と流れによる外洋域への水平輸送量をより定量的に明らかにすることが予定されている。
なお、この内容は「Environmental Science and Technology」に掲載された。論文タイトルは、「Tracking the fate of particle associated Fukushima Daiichi cesium in the ocean off Japan」。