【建設業界の4~6月期決算】「工事採算を重視する」受注方針が決算内容に反映しはじめ、大手4社は最高益を更新
2015年8月15日 21:09
8月6日、建設業界大手4社の4~6月期決算が出揃った。大手ゼネコンでは工事採算の改善で利益が急伸し、最終利益は4社とも四半期としては過去最高益を更新した。
アベノミクス以前に受注した東日本大震災の復興工事や景気対策の公共工事は採算性が悪かったが、それが前期までにかなりの程度、完工済みとなり、アベノミクスで回復した民間の設備投資を反映した工場や倉庫の新設、マンション建設、都市再開発など採算性の良い手持ち工事が残った。
「無理に受注を取りに行かず工事採算を重視する」という方針が決算内容に反映しはじめたと言える。首都圏の工事は活発だが、競技施設など2020年東京五輪の直接的な影響は言われているほど大きくはない。海外工事は業績に寄与している案件も、足を引っ張っている案件もある。
■4社とも最終利益は四半期ベースで過去最高
2015年3月期の実績は、大成建設<1801>は売上高14.8%増、営業利益11.28倍、経常利益12.27倍、四半期純利益30.22倍の増収大幅増益。最終利益は四半期としては過去最高益を更新。大幅増益の原動力は工事採算の大幅な改善で、前期までに震災復興など採算性の悪い工事の完工が相次ぎ、受注競争も緩和して受注価格が上昇し、採算性が良い工事を受注できている。
大林組<1802>は売上高3.7%増、営業利益144.1%増(約2.4倍)、経常利益120.7%増(約2.3倍)、四半期純利益61.6%増の増収、2ケタ増益。最終利益は四半期としては過去最高益を更新。2013年度から採用した「低採算工事の抑制方針」が業績面で利益率の向上に寄与しはじめている。
清水建設<1803>は売上高22.8%増、営業利益119.5%増(約2.2倍)、経常利益123.0%増(約2.2倍)、四半期純利益129.2%増(約2.3倍)の2ケタ増収、3ケタ増益。最終利益は四半期としては過去最高益を更新。工事採算の改善が進んで大幅増益になった。
鹿島<1812>は売上高3.8%増、営業利益76.2%増、経常利益89.8%増、四半期純利益138.3%増(約2.4倍)の2ケタ増収、3ケタ最終増益。最終利益は四半期としては過去最高益を更新。製造業の業績回復で工場の増産投資が増え建築受注が大きく伸びた。
■進捗率が高く業績見通しの上方修正の可能性十分
2016年3月期の通期業績見通しは、大成建設は売上高1.1%増、営業利益3.4%減、経常利益16.7%減、当期純利益10.0%増の通期業績見通しも、8円の予想年間配当も修正しなかった。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は36.9%だった。
大林組は売上高0.2%減、営業利益3.3%増、経常利益6.5%減、当期純利益4.5%増の通期業績見通しも、10円の予想年間配当も修正しなかった。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は36.5%だった。
清水建設は売上高2.1%増、営業利益25.9%増、経常利益13.8%増、当期純利益22.8%増の通期業績見通しも、10円の予想年間配当も修正しなかった。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は27.7%だった。
鹿島は売上高3.3%増、営業利益215.8%増(約3.2倍)、経常利益101.3%増(約2.0倍)、当期純利益65.1%増で前期からV字回復する通期業績見通し、6円の予想年間配当とも修正しなかった。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は42.6%と大きい。(編集担当:寺尾淳)