NASA火星探査機「MRO」、軌道変更に成功=来年着陸の探査機支援のため

2015年8月11日 11:19

 米航空宇宙局(NASA)は7月29日、運用中の火星探査機「マーズ・リコネサンス・オービター」(MRO)の軌道を変更したと発表した。来年9月28日に新しい火星探査機「インサイト」が着陸するのに備えたもので、MROはインサイトが火星を降下し、地表に到達するまでの間、通信をつなぐ役割を担う。

 軌道修正は太平洋夏時間2015年7月29日6時21分31秒(日本時間2015年7月29日22時21分31秒)から始まり、MROに装備されている6基のスラスターが75秒間噴射され、新しい軌道へ乗り移ることに成功した。

 MROのプロジェクト・マネージャーを務めるダン・ジョンストンさんは「MROは無事、正確な時間に正確な軌道へ入ることができました。この軌道変更がなくては、MROはインサイトが火星に着陸する際に信号を聞き取ることができません」と語る。

 MROは2005年8月12日に打ち上げられ、2006年3月10日に火星に到着した。高い分解能を持つ高性能カメラを装備しており、火星の地表をつぶさに観測できる。また同時に、火星の地表にいる探査車や着陸機と、地球とをむすぶ、中継衛星としての機能も持っており、これまでにも「フェニックス」、「キュリオシティ」の着陸を支援している。そして来年9月28日には、新たにインサイトが着陸に挑むことから、その様子を見守るために最適な軌道へと移されることになった。

 インサイトは火星の内部の様子を探ることを目的とした探査機で、2008年に火星に着陸したフェニックスの設計をもとに開発が行われている。打ち上げは2016年3月8日から27日の間に、火星着陸は同年9月28日に予定されている。到着後は、約2年間にわたって観測を続ける予定となっている。

 MROはインサイトの着陸時に信号を受信し、いったん探査機内のメモリーに保管する。その後、地球と通信ができるようになったタイミングで送信され、それを地上で受信し解析することで、着陸が成功したか否かが判明する。

 インサイトの着陸を見届けたのち、MROは2016年10月と2017年4月に2回の軌道修正を行い、2006年以来観測を続けていた、いつもの軌道へと復帰する。2017年の軌道修正のあとでも、推進剤は187kgが残っており、これは19年間にわたって通常運用が続けるのに十分な量だという。

写真=NASA。

■NASA Spacecraft Will Alter Orbit to Be in Place for Mars Lander's Arrival - Mars Reconnaissance Orbiter
http://mars.nasa.gov/mro/news/whatsnew/index.cfm?FuseAction=ShowNews&NewsID=1845

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