NYの視点:米国の低インフレは利上げペースで調整
2015年8月11日 07:17
*07:18JST NYの視点:米国の低インフレは利上げペースで調整
米ウォールストリートジャーナル紙のFedウォッチャー、ヒルゼンラス氏は、市場の期待インフレの低下が、9月にも予想されているFOMCの利上げ開始時期に影響を与える可能性があると指摘した。投資家のインフレ期待を正確に表すとされるインフレ連動債(TIPS)市場で、5-10年の期待インフレ率は2.01%と、6月末の2.25%水準から低下。この水準は2010年に連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和第2弾(QE2)の開始を発表した当時とほぼ同水準、2012年に量的緩和第3弾(QE3)を実施した時の水準を下回るという。2010年に9.5%だった失業率は、現在5.3%まで低下している。
FOMCの利上げの条件は、1)完全雇用と、2)インフレが目標である2%に上昇する理にかなった自信。FOMCがインフレ指標としている個人消費支出(PCE)コア指数は3年間2%を下回ったまま。イエレンFRB議長と同様にその連邦公開市場委員会(FOMC)での権限が強いフィッシャー副議長は、FOMCの2つの責務のうち雇用は完全雇用に近づいたとしながらもインフレは「非常に低い」とし、問題がインフレサイドにあることを認めた。ただ、雇用の強さがいずれインフレを押し上げると見ており、現在の低インフレが「一時的」と見ている。
一方、2015年度のFOMCの投票権を有するロックハート・アトランタ連銀総裁は米国の経済が「もはや異例な状況ではない」とし、「利上げの時期に近づいた」との見解を表明した。また、9月の利上げ支持に傾斜しつつあることも明らかにした。インフレに関しては、「利上げ開始後の利上げペースを決定する上で、インフレの進展が重要」と発言。この発言から、インフレ動向にかかわらず9月の利上げ開始は「決定的」との見方が強まった。イエレンFRB議長も議会証言で、早めに利上げを開始することで緩やかなペースでの利上げが可能になると言及している。FOMCは9月のFOMC会合でとりあえず0.25%の利上げを開始し、その後の利上げはインフレの動向次第になる可能性が強い。ロックハート・アトランタ連銀総裁は「緩やかなペースというのは、必ずしも各会合で利上げを実施しないことだ」としている。《NO》