日本初のスマートグリッドタウンが震災復興の象徴として来春誕生へ
2015年8月8日 20:08
宮城県東松島市と積水ハウス<1928>が、官民一体で進めてきた「市営柳の目東住宅」が竣工し、8月6日に新住民への鍵の引き渡し式が、阿部秀保東松島市長他出席のもとに行われた。8日に入居が開始される。
「市営柳の目東住宅」は、東日本大震災の被災者の住む仮設住宅から新たな住まいへの転居をサポートする東松島市の事業として、積水ハウスが企画・設計から土地購入、開発、農地転用、造成、建築まで一貫して担い実施した全85戸の災害公営住宅だ。
災害公営住宅では早期の建築と費用抑制も大きな課題となる。「市営柳の目東住宅」の場合は、企画から建築までを1社に任せることで、最短での完成を実現させた。また、戸建ての間取りは反転を含む計6パターンに絞りながら、外壁パターン・外壁色・屋根形状を変えてまちなみに変化を与える様に工夫したという。用地交渉から竣工まで3年を要したが、これはスピーディな展開といっていいだろう。
また、「市営柳の目東住宅」は、周辺の病院・公共施設を結ぶ、マイクログリッド(エネルギー供給源と消費施設をもつ小規模なエネルギー・ネットワーク)により電力を供給し、エコで災害に強いまちづくりの実現を目指す「東松島スマート防災エコタウン」構築事業も同時に進めている。このシステムの稼働開始は2016年3月を予定しているという。
「東松島スマート防災エコタウン」は、「市営柳の目東住宅」と周辺の病院、公共施設等を結ぶ自営線によるマイクログリッドを構築し、敷地を超えてエネルギーを相互融通する日本で初めてのスマートグリッドを実現する。太陽光発電460kWを有する自営線特定規模電気事業者が、最適に制御しながら電力供給を行う。その結果、太陽光発電で年間256t-CO2の二酸化炭素排出を削減し、エリア内でのエネルギーの地産地消が実現する。また不足する電力については、既存の大規模発電所からの送電電力ではなく、東松島市内にある低炭素型電源から既存電力網を利用して供給することで、地域全体の地産地消も可能となる。
万が一、系統電力が遮断した場合にも、同タウン系統内の太陽光発電を、蓄電池を用いて安定化させ大型のバイオディーゼル発電機と組み合わせ3日間は通常の電力供給が可能だ。大震災のような長期の停電時にも、病院などの災害活動の拠点施設への電力供給も途切れることなく、地域の災害対応力と防災力向上に寄与するこが可能になるわけだ。
また、来年3月には、徒歩5分のところにJR仙石線の新駅「あゆみの駅(仮称)」が開業予定なので、利便性も高まることだろう。
多大なる犠牲を払った上ではあったが、その教訓を活かして、被災地が最新鋭の防災エコタウンに生まれ変わる。このような取り組みは、もちろん被災地だけではなく、多くの地域で取り組むべきことだろう。(編集担当:久保田雄城)