産総研、マウスのES細胞から胃の組織を丸ごと分化させる技術を開発

2015年8月8日 20:53

 産業技術総合研究所の栗崎晃上級主任研究員らの研究グループは、マウスのES細胞から胃の組織を丸ごと分化させる培養技術を開発した。

 近年、ES細胞などの多能性幹細胞を利用して、すい臓、肝臓、腸などの組織へと分化させる方法の開発が進められている。しかし、胃の組織へと分化させる技術は、分化過程の組織を適切に区別する方法が整備されていなかったことから、ほとんど開発が行われていなかった。

 今回の研究では、まず、マウスES細胞から胚葉体という細胞塊を試験管内で形成させ、その後ShhとDKK1という2種類の成長因子を加えて培養することで、胃組織の元となる胎児の胃原基を作り出した。

 そして、この風船状の胃原基組織をピンセットでマトリゲルと呼ばれる特殊なゲル内に移植し、さらに培養を続けて成熟させた。その結果、ES細胞から作製した胃組織でも、正常胃組織と類似した胃粘液や消化酵素を分泌する胃上皮組織が確認された。

 今後はヒト幹細胞を胃組織へと分化させるため、分化条件や培養条件の最適化を進めることが予定されている。将来的には、ヒトの胃組織を用いた病態モデルや治療薬開発のための試験管内モデルとしての応用を目指しているという。

 なお、この内容は「Nature Cell Biology」に掲載された。

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