九大、アトピーの慢性的な痒みのメカニズムを解明
2015年7月29日 19:25
九州大学の津田誠教授、白鳥美穂学術研究員らの研究グループは、アトピー性皮膚炎の慢性的な痒みが生じるメカニズムの一端を明らかにした。将来的に痒みを鎮める治療薬の開発に応用できることが期待されるという。
アトピー性皮膚炎などに代表される耐え難い慢性的な痒みは、過剰な引掻き行動を起こし、それが原因で皮膚炎が悪化、さらに痒みが増すという悪循環に陥る。痒みを誘発する物質や痒み信号を伝える神経などが次々と発見され、少しずつその仕組みが解明されてきたが、どのようなメカニズムで痒みが慢性的になってしまうのかは明らかとなっていない。
今回の研究では、皮膚を激しく引掻くアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて研究を行い、そのマウスが引掻く皮膚と神経で繋がっている脊髄後角で「アストロサイト」と呼ばれるグリア細胞が長期にわたって活性化していることを発見した。さらに、遺伝子の発現を促すタンパク質STAT3がこのアストロサイト内で働いていることや、それを阻害することでアトピーマウスのアストロサイトの活性化と引掻き行動が共に抑えられることを明らかにした。
こうした結果から、アトピー性皮膚炎に伴って脊髄後角で活性化するアストロサイトが慢性的な痒みの新しい原因細胞であることが明らかとなった。
今後は、今回の研究成果が、アストロサイトを標的にアトピー性皮膚炎の治療薬を開発するという新しいコンセプトに繋がると期待されている。
なお、この内容は「Nature Medicine」に掲載された。論文タイトルは、「STAT3-dependent reactive astrogliosis in the spinal dorsal horn underlies chronic itch」。