産総研、昆虫の共生細菌の形成メカニズムを解明

2015年7月29日 19:07

 産業技術総合研究所の深津武馬研究グループ長らは、ヒメナガカメムシという昆虫で、微生物との共生に特殊化した細胞の形成過程と機構を解明した。

 生物種の過半数は昆虫類であることが知られており、その高度で多彩な生物機能の開発や利用が期待されている。その中でも、微生物を体内や細胞内に恒常的に保有し、共生関係を構築する能力は、必須栄養素の供給など生存に必要な機能を獲得しているが、菌細胞の由来や起源は長年の謎であり、形成機構も不明であった。

 今回の研究では、菌細胞内にシュナイデリアという共生細菌を持つヒメナガカメムシの胚発生過程での共生細菌の分布をより詳細に調べた。その結果、産卵後48時間頃に共生細菌が胚体外の腹面に集積し、産卵後72~84時間後には胚体内に左右6対の菌細胞塊原基が出現し、共生細菌が移動、感染、局在化すること、その後、産卵後96時間頃には左右の6つの菌細胞塊原基がそれぞれ融合し、最終的に左右1対の菌細胞塊が形成されることが分かった。

 さらに、胚発生過程での各種ホメオティック遺伝子の発現を抑制してみたところ、ウルトラバイソラックス遺伝子の発現を抑制すると菌細胞が形成されなくなり行き場を失った共生細菌が散在することなども明らかになった。

 今後は、さらに研究を進めることで、昆虫の共生細菌だけではなく、病原細菌なども含めた感染制御技術の開発に繋がる可能性もあると期待されている。

 なお、この内容は「Proceedings of the National Academy of Sciences USA」に掲載された。 

関連記事

最新記事