伊藤忠がフランスの食用油メーカーを買収 世界的な健康志向に対応
2015年7月22日 08:10
伊藤忠商事〈8001〉は7月9日、フランスの食用油メーカー「プロヴァンス・ユイル(PH)」に資本参加することで、同社株主のMediaco Vrac Development(MVD)と合意したと発表した。PHの株式60%超を年内に取得する。取得額は60~80億円と報じられている。
MVDは、ひまわり油、グレープシード油などの付加価値の高い植物油を製造している。ひまわりの種子からとれるひまわり油は、含有している脂肪酸の約70%がリノール酸とされている。リノール酸にはコレステロール値を下げる効果がある。また、ひまわり油は、ごま油、オリーブ油の約5倍のビタミンEを含むとされている。
一方、フロリダ大学の研究によると、ぶどうの種子からとれるグレープシード油には、太りにくくする作用のあるトコトリエノールという物質が含まれている。
PHは、フランス国内の南部ヴィトロルなどに2カ所、アルゼンチンに1カ所工場を持ち、植物油を製造している。
世界的な健康志向の高まりを背景に、いま植物油市場は急速に拡大している。米国などでは、工業的に作られる油脂成分でマーガリンや菓子などに含まれるトランス脂肪酸の規制が強化されている。米FDA(食品医薬品局)は3年後のトランス脂肪酸の原則禁止を表明している。こうした中で、高付加価値の植物油の需要拡大が見込まれている。
川上の食料資源の確保、川中の加工・製造、中間流通、川下のリーテイルに至るグローバル・バリューチェーンの構築を推進している伊藤忠は、PH買収で欧州に事業拠点を得て、バリューチェーン強化に繋げる。
伊藤忠は、すでに植物油ビジネスでは、米国で事業基盤を持っているが、PH買収によって、欧州・南米における製造・販売拠点を得て、この分野のグローバルな競争力を強化することができる。現在200億円のPHの売上高を、5年後に300億円に拡大する計画だ。(編集担当:久保田雄城)