NIMSなど、分子の回転運動を動画撮影することに成功―量子力学的な波の動きを可視化
2015年7月8日 18:40
自然科学研究機構(NINS)の水瀬賢太助教、東京工業大学の大島康裕教授らの研究グループは、分子が千億分の1秒スケールで一方向に回転する様子を連続画像として撮影することに成功した。
分子は1秒間に100億回以上という速さで回転をしており、その振る舞いは量子力学に従うと考えられている。近年、極短パルスレーザー技術を利用して、100フェムト秒(10兆分の1秒)刻みで分子の向きが変化する様子を観測することが実現されているが、分子の回転方向を完全に特定することはできていなかった。
今回の研究では、100フェムト秒程度の時間幅を持つレーザーパルスを適切な時間間隔で2発続けて照射することで、右もしくは左回りに分子がそろって回転する状態を作り出し、強力な第3の極短レーザーパルスによって回転する窒素分子から複数の電子をはぎとり、レーザーパルスの時間幅以内で2つの窒素原子イオンに分解させることで分子の向きの分布を求めることに成功した。
そして、この技術を使って窒素分子が左回りにそろって回転する様子を、33フェムト秒(約30兆分の1秒)/フレームの時間分解能の動画として撮影し、プロペラの形状をした分子配向分布が約700フェムト秒(約1兆4000億分の1秒)で3分の1回転する様子や、プロペラ型から十文字型へと形状が変化していく様子が明瞭に観測できた。
今後は、波として振る舞うという一見不可解な量子力学的運動が、私たちになじみ深い古典的な運動とどのように関連付けられるのかを実験的に突き止めることや、一方向にそろって回転する分子の集団を極短パルス光を精密に制御するための「光学部品」や、2つの独立な極短パルス光の時間差を正確に計測する「ストップウォッチ」として利用することが期待されている。
なお、この内容は「Science Advances」に掲載された。論文タイトルは、「Quantum unidirectional rotation directly imaged with molecules」。