ぎりぎりの調整で世界遺産登録―岸田外相

2015年7月6日 12:01

 軍艦島で知られる端島炭鉱(長崎市)など「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界遺産に登録されることが決まった。「8日に登録される見込み」(外務省)。

 一方で、世界遺産登録決定後、日本の佐藤地(さとう・くに)ユネスコ大使は「1940年代に一部施設で大勢の朝鮮半島の人々などが意に反し、厳しい環境の下で労働を強いられた。この犠牲者のことを忘れないように情報センターの設置など適切な措置をとる用意がある」と発言した。韓国側は確実な履行を求めた。

 岸田文雄外務大臣は5日夜の記者会見で、まず、登録決定について「1850年代から1910年にかけて我が国における製鉄・製鋼、造船、石炭産業といった重工業の産業化に中心的役割を担った遺産群として高く評価された。非西洋で初めて産業化に成功した先人達の努力に心から敬意を表し、同遺産群の果たした世界的役割が一層広く世界に知られる契機となることを期待する」と歓迎した。

 また、「日韓がともに協力し、日本の推薦した案件、韓国の推薦した案件ともに登録が実現した。これは関係者とともに歓迎し喜ぶべきこと」と語った。

 一方で、佐藤大使の発言については「この発言はこれまでの日本政府の認識を述べたものであり、1965年の韓国との国交正常化の際に締結された日韓請求権・経済協力協定により、いわゆる朝鮮半島出身者の徴用の問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場に変わりない。この点、外交上のやりとりを通じ、韓国政府は今回の我が国代表の発言を日韓間の請求権の文脈において利用する意図はないと理解をしている」とした。

 また「世界遺産委員会の責任あるメンバーとして国際記念物遺跡会議の勧告に真摯に対応していく姿勢を示すための発言」であり、「日本の大使が使った『forced to work』との表現等は『強制労働』を意味するものではない」とした。

 今回の世界遺産登録をめぐっては、韓国が「遺産群には強制徴用された施設がある」とし、登録に反対。その後、日韓外相会談、事務レベルでの「ぎりぎりの調整」(岸田外務大臣)を経て、登録にこぎつけた。(編集担当:森高龍二)

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