ギリシャと日本の違い
2015年7月6日 07:19
*07:19JST ギリシャと日本の違い
ギリシャの実質的な財政破綻を受けて、約1100兆円の債務を抱える日本もギリシャのように破綻するのではないかと心配する(又は煽る)向きが増えてきた。単純に比較すると、ギリシャの債務は約43兆円で国内総生産(GDP)対比では約170%、日本はGDP比では約240%と、一見日本の方が危機的状況にもみえる。
しかし、ギリシャと日本では全く状況が異なる。ギリシャの債務のほとんどは外国人(約80%が欧州中央銀行等の公的機関)が債権者なのに対して、日本の債務はほぼ全て(約97%)は日本人が債権者であり、日本人が日本人に融資しているという形で国内で資金が回っている。従って、ギリシャのように大々的に海外に対して日本がデフォルト(債務不履行)することはありえない。むしろ日本は対外的には世界一の資産大国で、海外に対する対外純資産は約360兆円もある。この膨大な資産のおかげで日本は貿易赤字になっても全体では経常黒字になるほどだ。日本は国際的な収支ではしっかり稼ぎ続けている。
また、日本人の個人金融資産は約1700兆円もあり、国の借金の潜在的な担保となっている。国には徴税権があるため、最終的には個人金融資産>国の借金であればファイナンスされるという理屈である。欧州等からみても日本の消費税は相対的に低いため財政の健全化は可能とみられている。
さらに、ギリシャが港などの国有資産の売却を検討していたように、国には借金だけではなく、資産もある。実際には売却できないものもあるが、国有地や国有の施設等で売却可能なものだけでも巨大な金額になる。財務省は「なぜか」国の「借金の金額」だけを強調して発表し、マスコミも借金の金額だけを大きく取り上げるが、併せて資産と負債の差額を同じように発表すべきだろう(なお、国の貸借対照表自体は公表されている)。
ギリシャと日本は上記のように状況が大きく異なるため、国債の金利は非常に低く(日銀の異次元緩和の効果もあるが)、日本という国に対する世界の信用もまだ揺らいでいない。むしろ、世界のリスク回避の情勢が強まると、信頼性の高いスイス・フランとともに円が買われるような状況だ。
ただ、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字が続き、債務の膨張がとどまるところを知らないという状態が続けば、いつかは上記の信頼が損なわれる時が来る。そのためにも、国の歳出と税収の広がり(いわゆる「ワニの口」)が「閉じて行きそう」と信頼させる状況を作る必要がある。
簡単に言えば、景気を良くして税収を上げつつ、歳出はなるべく減らすということだが、歳出を減らすと景気が悪くなってしまうのでさじ加減が難しい。
また、税収を上げるために消費税の増税をすると、昨年のように大幅に景気が腰折れしてしまうので、これも簡単ではない。
日本がギリシャのようにならないためには、慎重にこの難しい隘路を歩いて行かなければならない。これは現在の(そして長期にわたるであろう)日本の最重要の課題だ。
今回ギリシャは衆愚政治の極みともいえる行動で大混乱に陥ったが、日本はギリシャを他山の石として、予め破滅を回避するために必要となれば、政治家も国民も厳しい判断をすべき時は果断に実行すべきだ。《YU》