京大、リズム音に対するヒトとチンパンジーの類似性を明らかに―自分に近いリズムに引き込まれる
2015年7月6日 16:20
京都大学の服部裕子特定助教らの研究グループは、ヒトとチンパンジーは音のリズム音に対して類似した傾向を示すことを明らかにした。
音楽に合わせて歌ったり踊ったりする行為は、ヒトがグループ内での繋がりや協力を高めるために進化させたユニークなコミュニケーション方法だと考えられている。しかし、どういった進化的起源を経てこの能力を獲得したのかは解明されていない。
今回の研究では、光ナビゲーション機能のついた電子キーボードを用いて、1オクターブはなれた2つのキーを30回タッピングするよう、ヒトとチンパンジーに訓練した。その結果、ヒトもチンパンジーも、1つのキーから次のキーを叩くまでに、およそ400ms〜600msかかることが分かった。ただし、チンパンジーのタッピングはテンポの変動が大きい一方で、ヒトは安定したテンポでタッピングを行うことが明らかになった。
こうした訓練の後、タッピングの最中に、様々なテンポの音刺激を呈示し、どのテンポの音に対して、タッピングのタイミングを合わせるのかを調べた。その結果、自分のタッピングの速さに近いテンポのリズム音を聞いた時に、ヒトもチンパンジーも自発的に音のリズムに合わせてタッピングする傾向があることが分かった。
音のリズムに対する同調行動は、複雑な音声コミュニケーション能力と関係があるかもしれないという仮説が唱えられているが、今回の研究結果は、ヒトがそうした複雑な音声コミュニケーションを行うずっと以前から、音のリズムに対する感受性をもち、それに対して敏感に反応していたことを示唆している。また、複雑な音声コミュニケーションをもたないチンパンジーで類似した傾向がみられたことから、リズムに対する感受性や反応は、霊長類の中で発声能力以外の要因で発達していった可能性が考えられる。
研究メンバーは、「ダンスや合唱といった音楽活動は、集団の結束を高め、さまざまな感情を共有できるヒト独自のコミュニケーションですが、それを支える認知的基盤は既に600万年前から獲得されていました。今後は、その後分岐したほかの霊長類種が、そうした基盤をどのようにコミュニケーションに取り入れているのかを明らかにしていきたいです。」とコメントしている。
なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。論文タイトルは、「Distractor Effect of Auditory Rhythms on Self-Paced Tapping in Chimpanzees and Humans」。