日本の印刷を変えるかもしれない 環境にやさしい「フレキソ印刷」とは?
2015年7月5日 13:38
「フレキソ」という印刷技術をご存知だろうか。日本ではオフセット印刷やグラビア印刷が一般的に知られているが、省資源で経済的な印刷方式として、環境意識の高いヨーロッパではすでにポピュラーなものとなっている。
フレキソ印刷は凸版印刷方式の一種で、版の素材にはゴムや合成樹脂を使用している。インキ供給には金属製のアニロックスロールを用いる。アニロックスロールを交換すれば、簡単に画質の調整が可能で、溶剤インキや水性インキ、UVインキ全てが使用できる。版に柔軟性があり、ダイレクトに被刷体に印刷できるため、フレキソ印刷は平滑性の悪いダンボールや厚紙、フィルム・布・不織布等への印刷に主に活用されてきた。
中でも水性インキを使ったフレキソ印刷は、環境配慮の面からも注目度が高く、欧米諸国では積極的に採用されており、ヨーロッパのフレキソ印刷市場は年4-8%前後の成長を続けているという。日本では、業界内ではフレキソ印刷の優位性は認められているものの、なぜか導入や利用は遅れている。
その理由として考えられるのは、生産やシステムの環境整備が遅れていること、そしてその背景にはクライアント側にフレキソ印刷がオフセットやグラビアに劣っているというイメージが根強いことがあるようだ。とくに印刷再現性を重視する分野においてはその傾向は顕著だったが、近年印刷技術の向上により品質が飛躍的に向上したことで、様子が変わってきた。
また、埼玉県生活環境保全条例など、大気汚染防止の観点からVOC(揮発性有機溶剤)削減の動きが強まる中、脱VOCが難しいとされるグラビア印刷に対して、UVインキや水性インキという手段を持つフレキソ印刷への注目が高まるのは当然ともいえるだろう。そして、このような流れを受け、印刷業界はもちろん異業種からもフレキソ市場の発展と成長を見込んだ新規参入が現れはじめている。
その代表的な企業が住友理工?5191?だ。高機能ゴム・樹脂の製造で知られる住友理工は、自動車用防振ゴムでは世界トップシェア、自動車用ホースでは国内トップシェアを誇る企業。そんな住友理工がこれまで培ってきた高分子材料技術、高精度成形シーティング技術、構造設計技術、特性/製版評価技術などを結集し、水現像フレキソ版「AquaGreen」を開発した。
「Aqua Green」は、界面活性剤を添加した40~50℃の水道水で現像が可能であり、有機溶剤で現像する溶剤現像版と比較し、環境面で負荷を大幅に低減する。さらに現像・乾燥時間が速く、溶剤現像版に比べ3倍以上の生産性を誇り、光熱費などの削減にも貢献する。そして最大の特長は、これまでフレキソ印刷のネックとなっていた印刷再現性が大幅に向上している点だ。住友理工の「AquaGreen」は、従来のものに比べて酸素硬化阻害の影響が少ないので、高画質印刷の為のフラット・トップ・ドットやデザイン通りの網点を再現可能であるほか、微小網点径の諧調性が高くメリハリのある印刷再現が可能となっている。
脱溶剤印刷を実現し、残留溶剤の心配がいらない安全なフレキソ印刷は、子育て世代のお母さんや医療・介護などの現場からも、大きな支持を集めることになりそうだ。実際、フレキソが普及している欧州では、直接手に触れる機会の多い食品や医薬品関連のパッケージにおいて、フレキソ印刷が圧倒的なシェアを確保している。このことから、日本でも今後、同じ流れになることが予想されている。
いずれにしても、近い将来には日本でもフレキソ印刷がスタンダードになることは間違いなさそうだ。(編集担当:藤原伊織)