IT化が加速する自動車を縁の下で支える日本の高度なアナログ技術
2015年6月28日 08:57
近年、急速に自動車のIT化が進んでいる。自動車の運転制御システムだけでなく、センシング技術やクラウドコンピューティングとの連動など、情報処理能力が格段に向上しているほか、自動車自体が移動するセンサーとなって情報収集を行うことでビックデータ市場への期待が高まるなど、単なる移動手段に留まらない新しい価値が創造されている。
しかし、その一方では、自動車の大前提である「快適に走る」ためのアナログな日本の技術も再認識されつつある。
例えば、自動車に乗ると必ず目にする「自動車メーター」がある。自動車メーターはどんな車にも搭載されているもので、人と車をつなぐ最も基本的なインターフェースだ。最近ではメーターパネルにナビを表示するなど、次世代仕様のものも登場しているが、必要な情報をドライバーに瞬時に伝える視認性だけでなく、高級感やスポーティ感など、その車のイメージを左右する車内インテリアの一部としてのデザイン性も要求されるパーツだ。日本企業としては矢崎グループが世界有数のシェアを誇っている。ちなみに矢崎グループの中核である矢崎総業はワイヤーハーネスにおいても世界トップクラスのシェアを持つグローバル企業でもある。
また、自動車は路面やエンジンなどにより、運転者や同乗者にとって不快な振動が発生する。この対策のため、車に必ず搭載されている重要な部品として「ゴム」があげられる。普段、自動車に乗る時に我々がゴムを意識して運転するようなことはまず無いが、実は自動車には30種類以上ものゴム部品が使われているのだ。
ゴムは自動車メーターのようにドライバーの目に触れることはほとんどないが、サスペンションやエンジン部分など、車の部品と部品の接続部分には必ずといっていいほどゴム部品が使われている。一昔前の自動車に比べ、走行中の車内が格段に静かであったり快適であったりするのは、ひとえにこのゴムの性能が上がっているからといっても過言ではないだろう。
とくにエンジンマウントとして使われる防振ゴムの役割は重大で、これが無ければどんなに優れた性能の車であっても振動が激しくて運転どころではなくなってしまう。パワーの大きなエンジンであればあるほど、エンジンの振動を吸収、遮断する強力なエンジンマウントが必要になる。
自動車用ゴム部品の分野では、ブリヂストン<5108>など世界でも高い評価を受けている日本企業は多いが、その中でもとくに防振ゴムで世界トップシェアを誇っているのが住友理工<5191>だ。その歴史は古く、1955年にトヨタ自動車のトヨペットクラウン(初代クラウン)に同社初の防振ゴムが採用されている。しかも、住友理工のゴム製品は防振ゴムだけに留まらず、燃料系やラジエーター、パワーステアリングホースなどにも使われている。
「縁の下の力持ち」という言葉があるが、自動車の各部品メーカーには、まさにこの言葉がピタリと当てはまる。メイドインジャパンの自動車といえばどうしても、自動車メーカーばかりが取り上げられることが多いが、日本車のみならず、高度な日本の技術は様々な国の自動車の随所に採用されている。世界の自動車の安全と快適さを支えているのは、縁の下に息づく日本の技術なのだ。(編集担当:藤原伊織)