筑波大、コンブや珪藻などを含む大系統群の根元に位置する新種の生物を発見
2015年6月23日 16:07
筑波大学の石田健一郎教授のグループは、多様なグループを含むストラメノパイル生物群の最も初期に枝分かれしたと見られる新種の原生生物を発見した。
トラメノパイル生物群は、今から約10億年前に誕生したと考えられる真核生物の主要分類群(スーパーグループ)の一つで、10万種以上が存在すると考えられている。ストラメノパイル生物群には、コンブやワカメなどの褐藻類から、水圏生態系の重要な生産者である珪藻類、バイオ燃料をはじめとするオイル生産に利用されるラビリンチュラ類など、地球環境や人間生活に重要な生物を多数含んでいるが、それらの多様な生物がどのように枝分かれし、進化していったのかは明らかになっていなかった。
今回の研究では、パラオの海水中から、ストラメノパイル生物群の最も初期に枝分かれしたと見られる新種の原生生物を発見した。光学顕微鏡観察ではこの生物がバクテリアを補食し、短い前鞭毛と長い後鞭毛を用いて基質上を這って移動する様子が観察された。
また、透過型電子顕微鏡を用いた観察では、鞭毛装置と呼ばれる構造について、既知のストラメノパイル生物とは異なる特徴が見つかった。さらにリボソームRNAを用いた分子系統解析を行ったところ、この生物がストラメノパイル生物群の中で最も初期に枝分かれした生物である可能性が示された。
これらの結果から、研究グループはこの生物を新属新種Platysulcus tardusと命名し、新科Platysulcidaeを提唱した。
今後は、本研究成果によって、ストラメノパイル生物群の多様性や初期進化についての理解が進むと期待されている。
なお、この内容は「Protist」に掲載された。論文タイトルは、「A New Deep-branching Stramenopile, Platysulcus tardus gen. nov., sp. nov.」。