8割以上の企業が従業員の健康維持策を実施―目的は「福利厚生」が5割以上で最多
2015年6月15日 11:06
高齢化の波は職場にも押し寄せている。労働者の高齢化にともない、従業員の健康管理が企業の重要課題となっている。また、日本再興戦略(成長戦略)で「国民の健康寿命の延伸」が重要施策の1つとして位置づけられているなか、12月に施行される改正労働安全衛生法により、従業員 50人以上の事業所においてはいわゆるストレスチェックの実施が義務づけられる(50人未満の事業所は努力義務)。
これを受け、帝国データバンクは、従業員の健康管理に対する企業の見解について調査を実施した。調査は、TDB 景気動向調査2015年5月調査とともに行った。その結果、従業員の健康保持・増進策を実施している企業は84.2%。目的として最も多いのは「福利厚生」で、「従業員の生産性の向上」「従業員満足度の向上」など“健康経営”関連は約3割だった。
まず、自社において、従業員の健康保持や増進を行っているか尋ねたところ、「行っている」と回答した企業は84.2%となり、多くの企業が従業員の健康管理について何らかの対応策を実施していた。規模別にみると、「小規模企業」が 8割を下回るものの、「中小企業」と「大企業」はいずれも8割台となっており、企業規模にかかわらず企業は従業員の健康管理に取り組んでいることがわかった。
次に従業員の健康保持・増進策を行っている企業8,976 社に対して、その目的を尋ねたところ、「福利厚生」が 56.8%で最多となった(複数回答、以下同)。次いで、「法令遵守」「従業員のモチベーションの向上」が4割台で続いた。
さらに、「従業員満足度の向上」「従業員の生産性の向上」「リスク発生につながる可能性の低減」となり、約3割の企業は従業員の健康管理に「健康経営」の視点を持って取り組んでいる。企業内福利厚生制度において、企業は法令遵守を前提としつつも、従業員へのモチベーションや満足度の向上を重視している様子がうかがえる。
また、従業員の健康保持・増進のために、どのような対応を行っているか尋ねたところ、労働安全衛生法によりすべての事業主には健康診断の実施義務、労働者には受診義務がある「定期健康診断の実施」が 95.3%で1位となった(複数回答)。次いで、保健指導などの「定期健康診断の事後措置」「職場の喫煙対策の実施」が4割台、労働時間や労働密度など「心身の過重負荷要因の改善」「職場環境の改善」が 3 割台で続いた。
企業からは、「計画有休の年5日間取得を義務付けている」(不動産、山形県)や「月に一度、安全衛生会議を実施」(化学品製造、神奈川県)、「スポーツクラブへの企業会員加入」(情報サービス、群馬県)など、従業員が自身の健康を維持・改善するための環境整備を行っているという声が挙がった。また、「インフルエンザ予防接種の半額補助」(化学品卸売、静岡県)や「禁煙手当の支給」(石油卸売、岡山県)といった、従業員の健康管理を促す金銭的な支援を実施している企業もあった。
しかし、「社員の一部が個人の健康データを会社に保管されるのを嫌がるので、定期健康診断をしても会社でデータを保持しないようにした」(貴金属製品製造、山梨県)という意見もあり、より良い着地点を探しながら従業員の健康を保持・増進しようとする企業の姿勢が垣間見えたとしている。(編集担当:慶尾六郎)