小鳥のヒナは、集中的な発声練習と休憩を繰り返しながら歌を習得する―北大
2015年6月12日 23:16
北海道大学の和多和宏准教授らによる研究グループは、小鳥のヒナと成鳥では、一日の中の発声練習「さえずり」の回数や頻度が異なることや、ヒナがさえずりの歌パターンを学習する過程を明らかにした。
ヒトの言語獲得や小鳥の歌学習のような発声パターンの学習では、自ら発声してそれを繰り返す発声練習が大事だが、発声練習が個体発達の過程で一日どれくらいの頻度・長さで自発的になされているのかは、ほとんど明らかになっていなかった。
今回の研究では、小鳥として親しまれているソングバードの一種キンカチョウのヒナが歌いはじめてから最終的に歌パターンを完成するまでの3カ月以上の期間のすべての発声行動を24時間自動録音した。
その結果、小鳥の成鳥は一日中だらだらと歌をうたうが、ヒナは一日のなかで短時間に集中して発声練習を行うこと、ヒナは発声練習中にはその日の朝に歌いはじめたときの歌とは異なるような歌パターンを発声し、休憩すると朝のはじめの歌に少し戻るような歌い方をしていること、この歌パターンの変動を繰り返しながら、一日のなかで少しずつ歌パターンの学習が進んでいることが分かった。
また、一日の中の発声練習を人為的に減らしたり、聴覚入力がない状態にするとそのような歌パターンの変動が見られなくなった。聴覚入力がない小鳥は下手な歌(お手本の歌とは違う歌)しかさえずることができなかった。
こうした結果から小鳥のヒナの自発的な発声練習の回数・タイミング・頻度が一日での歌パターンの学習変化量に影響を与えていることが明らかになった。
今回の研究によって、小鳥のヒナが発声練習の回数・タイミング・頻度を誰からも教わることなく自ら歌学習発達に適したように行動していることが分かってきた。ヒトを含めた多くの動物で、学習時間や頻度を自発的に制御し、適切に学習発達が進むような自己訓練・自己教育が実行できるように学習行動を生得的にプログラムされている可能性も考えられる。今後、アクティブ・ラーニング等の教育法の開発など、教育学と行動学との融合研究にもつながる可能性がある。
なお、この内容は「The Journal of Expermental Biology」に掲載された。論文タイトルは、「Diurnal oscillation of vocal development associated with clustered singing by juvenile songbirds」(さえずり学習中のソングバード若鳥が集中的な発声練習と休憩を繰り返すことによってさえずりパターンに揺らぎをつくっている)。