北大、皮膚バリアが形成される分子機構を明らかに―アトピーの治療薬開発につながる可能性
2015年6月11日 16:58
北海道大学の木原章雄教授らによる研究グループは、皮膚バリアの中でも最も重要な脂質「アシルセラミド」が産生される分子機構を明らかにした。
皮膚バリアは、感染防御や体内からの水分損失の防止などの役割を持ち、異常をきたすとアトピー性皮膚炎や魚鱗癬などの皮膚疾患を引き起こす。その皮膚バリアの本体はセラミド・コレステロール・脂肪酸からなる脂質で、その中でも表皮に特異的に存在しているセラミド分子種アシルセラミドが最も重要である。
今回の研究では、長鎖塩基と超長鎖脂肪酸が結合した超長鎖セラミドを産生する培養細胞系を確立し、この細胞を用いてオメガ水酸化酵素活性の評価を行った。その結果、シトクロームP450ファミリーメンバーであるCYP4F22を超長鎖セラミド産生細胞に発現させると、アシルセラミドの前駆体であるオメガ水酸化超長鎖セラミドが産生されることが分かった。また、CYP4F22遺伝子に変異を持つ魚鱗癬患者の角質層ではアシルセラミドが顕著に低下していることも明らかになった。
今回の研究成果を基に皮膚バリアを増強する方策が見つかれば、アトピー性皮膚炎や魚鱗癬などの皮膚疾患の新規治療薬の開発につながることが期待される。
なお、この内容は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載された。論文タイトルは、「Essential role of the cytochrome P450 CYP4F22 in the production of acylceramide, the key lipid for skin permeability barrier formation」(皮膚透過バリア形成において鍵となる脂質であるアシルセラミド産生にシトクロームP450 タンパク質CYP4F22 が必須な役割を果たす)。