理研など、「非対称な光学迷彩」の理論を構築―外が見える「透明マント」の実現に期待

2015年6月10日 16:24

 理化学研究所の瀧雅人研究員らの共同研究チームは、非対称な光学迷彩を設計する理論を構築した。

 いわゆる透明マントのような、光を自在に曲げる装置によって物体や人を光学的に見えなくする技術を光学迷彩と言う。これまで提唱されてきた光学迷彩装置は、入射した光が一つの閉領域(シールド領域)を迂回するようにし、外部から見た人にとって、あたかもこのシールド領域内にある物体が存在しないように見せるため、シールド領域には光が入らないため、そこに隠れている人も外部を見ることができないという欠点があった。

 今回の研究では、光を捕捉する光学的な共振器のアイデアが光学迷彩装置にも活用できる点に着目し、格子共振器を拡張し電場に相当する効果を発生させる、光学格子共振器を用いた理論モデル(光学格子共振器モデル)を構築した。

 その結果、光があたかも一般的な電磁場中を運動する電子のように振る舞うことで、光学格子共振器のパラメータを調整するだけでかなり自由な伝搬光路を実現できる(逆方向から入射した光が、全く異なる曲がった光路をたどることができるなど)ことがわかった。特に磁場が及ぼすローレンツ力により、完全反対称な光路を実現できるという。

 現在の研究は理論の提案に留まっているが、理論とメタマテリアル(自然界にはない性質を備えた人工物質)の開発が進展することで、非対称光学迷彩が実現できることが期待される。

 なお、この内容は「IEEE Journal of Quantum Electronics」に掲載された。論文タイトルは、「Optical Lattice Model Towards Nonreciprocal Invisibility Cloaking」。

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