保育士らの92%が「給与に不満」、理想と現実のギャップは「100万円」
2015年6月7日 17:36
昨年9月、厚生労働省は「待機児童解消加速化プラン」をまとめた。2017年度末までの5年間で、約40 万人分の「保育の受け皿」を確保するという。が、実現への道のりは厳しい。
資格を持ちながら保育士として働いていない「潜在保育士」は全国に68万人。理由のひとつが、子供の命を預かる重労働に見合わない「賃金の低さ」だ。保育士の転職支援サービスを手がけるウェルクスが、保育士・幼稚園教諭らに対し「現在の年収に満足しているか」尋ねたところ、実に92%が「満足していない」と回答した。ほとんどの保育関係者が、年収に不満をもっている。
調査は今年1~2月と、5~6月にかけて実施。回答者数は200人で、内訳は「保育士」が87.5%、「幼稚園教諭」が10%、「その他保育教育関連等」が2.5%だった。平均年齢は32.8歳で、女性が97%を占めている。
厚労省の賃金構造基本統計調査によると、13年の保育士全体の平均年収は「310万円」。全職業の平均より、約100万円少ない。一方、今回、ウェルクスが保育士らに聞いた結果では、賞与や手当を含んだ年収額の平均は「213万2500円」だった。
厚労省の調査よりも約100万円少ない。派遣やパートなども含め、雇用形態や年齢で差が出た可能性もある。ちなみに、調査に回答した保育士たちが「希望する年収」の平均は「314万541円」。現実と比べて、100万ものギャップがあった。
保育士たちからは、切実な声が寄せられた。「資格を持って働いているにもかかわらず、最低賃金で働いているのに不満を感じる(20代女性)」、「基本給が低いのでボーナスが出ても安い(40代)」、「出勤日数も多く、16年続けているのに手取り15万。ありえない(30代)」など、賃金の低さ、昇給の少なさを訴える声が目立つ。「持ち帰り仕事が多いので残業に反映されない(30代)」、「毎日2~3時間の残業をしているがタイムカードを切らされる(20代)」など、労働基準法違反とみられるケースもあった。
保育士といっても、全員が「正社員」ではない。正規雇用とそれ以外の「待遇格差」も問題だ。非常勤の保育士たちからは、「常勤とほぼ同じなのに、残業しても勤務時間以外はカット。有給休暇も取らせてもらえず、常勤を休ませたいからと保育を頼まれる始末(40代)」、「給料は正規の3分の1。こんなに違うのに研修に出ろ! もっと勉強しろ! と言われても、やる気に繋がらない(40代)」など、切実な声があがっている。
この4月から、「子ども・子育て支援新制度」が始まった。政府は保育士などの給与を「3~5%」改善するという。が、それでは全く足りないだろう。そもそものベースアップはもちろん、せめて「同一労働同一賃金」を実現し、休日の行事に対する特別手当の増額など、処遇改善への課題は山積みだ。(編集担当:北条かや)