NIMS、フラーレンを使って再生医療用の細胞培養の足場を作成
2015年6月6日 21:45
物質・材料研究機構(NIMS)の南皓輔研究員らは、炭素材料の1つであるフラーレンの柱状結晶を用いて、細胞培養の足場となる材料の表面に、ナノスケールのパターンを形成することに成功した。
再生医療の実現にむけて、生体組織を生体外で構築するために細胞培養の足場となる材料の開発が求められている。特に細胞の分化を誘導・制御する手法として、足場材料の表面に小さな溝を一定方向に形成するなど、ナノからマイクロメートルサイズのパターン化した三次元構造を形成することにより、細胞の分化を誘導・制御できることが報告されている。
今回の研究では、細胞分化を誘導させる材料として着目されているフラーレンの柱状結晶(フラーレンウィスカー)を用いることで、表面がパターン化された足場材料を、センチメートルスケールの大面積で作成することに成功した。
この手法は、フラーレンウィスカーを水面に浮かべ、圧縮することで一列に並べ、基板に転写するだけで、足場材料の表面にナノスケールのパターンを形成することができるという非常に簡便な方法で、さらに生体適合性が高く、筋芽細胞を培養すると筋管細胞へと分化が誘導されるとともに、一定方向にそろって成長して行くことが分かった。
今後は、筋肉細胞に限らず、骨細胞や幹細胞の分化も誘導・制御できると考えられることから、これからの再生医療研究に大きく貢献すると期待されている。
なお、この内容は「Advanced Materials」に掲載された。論文タイトルは、「Highly Ordered One-Dimensional Fullerene Crystals for Concurrent Control of Macroscopic Cellular Orientation and Differentiation towards Large-Scale Tissue Engineering」。