【MotoGP第6戦】イタリアGP J・ロレンソ圧巻の走りで3連勝
2015年6月1日 13:23
5月31日、MotoGP第6戦イタリアGP決勝が行われた。舞台となるムジェロ・サーキットは、MotoGPが開催されるサーキットの中でも屈指のハイスピードコース。一周5,245mのこのサーキットはパッシングポイントが非常に多く、下り勾配の1,141mのロングストレートでは超高速バトルが繰り広げられるファンにも人気のコースだ。
また、このイタリアGPは現在ポイントリーダーのバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)の母国GPであるため、多くのロッシファンが詰めかけスタンドはシンボルカラーのイエローで染まった。
さらに、ドゥカティチームおよびドゥカティの2人のライダー、アンドレア・ドビツィオーゾとアンドレア・イアンノーネにとってもイタリアGPはホーム。ドゥカティチームの特設スタンドはチームカラーの赤で埋め尽くされ、ファンの熱気は最高潮に達した。
そんな中開催されたイタリアGPだが、今回は予選から予想外の展開となった。ディフェンディングチャンピオンであり、昨季ムジェロ・サーキットで見事なポール・トゥ・フィニッシュを決めたマルク・マルケス(レプソルホンダ)がフリー走行および予選1で苦戦して予選2への進出を逸してしまったのだ。これによってM・マルケスは13番グリッドからスタートするという大波乱となってしまった。
そんな中、ポール・ポジションを獲得したのは母国GPとなるA・イアンノーネ。予選ではサーキットベストラップを塗り替え、MotoGPでは自身初となる1番グリッドを手にした。2番グリッドにはホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)、3番グリッドにはA・ドビツィオーゾがつけ、ストレートで圧倒的なスピードを誇るドゥカティ勢が1列目に2台並んだ。
決勝は気温25℃、路面温度48℃、ドライコンディション。晴れ渡った空の下、決勝は始まった。1列目のA・イアンノーネとA・ドビツィオーゾのドゥカティ勢は好スタートを切って1コーナーに侵入したものの、ファーストラップで先頭に立ったのはJ・ロレンソだった。
また、予選で奮わず13番グリッドスタートと大きく出遅れたかに思われたM・マルケスはロケットスタートに成功し、スタート直後に6番手、2周目には3番手まで浮上。2番手につけていたA・ドビツィオーゾ、4番手のA・イアンノーネ、5番手のダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)とレース序盤から熾烈な2番手争いを演じた。
現在ポイントリーダーで、母国GPとなったV・ロッシは8番グリッドからスタート。レース序盤はやや順位を落としたものの、順当な走りで徐々に追い上げて10周目には6番手に浮上。熾烈な攻防を繰り広げる2番手争いに加わった。
V・ロッシの追い上げによってドゥカティ、レプソルホンダ、モビスターヤマハMotoGPの3チームが入り乱れる2番手争いは激化し、その間にトップのJ・ロレンソは独走状態に入った。
目まぐるしく順位が入れ替わる、抜きつ抜かれつの2番手の攻防の中、思わぬ事態に見舞われたのはA・ドビツィオーゾだった。15周目、残り9周という状況でマシントラブルに見舞われスローダウン。ピットインしたものの、そのままリタイアとなってしまった。
これによって、2番手争いはA・イアンノーネ、M・マルケス、D・ペドロサ、V・ロッシの4台に絞られたが、波乱はそれだけではなかった。
残り6周、18周目というレース終盤に差し掛かった時、A・イアンノーネと熾烈なデッドヒートを繰り広げていたM・マルケスがスリップして転倒。そのままレースから姿を消してしまった。
A・ドビツィオーゾ、M・マルケスといった上位陣がまさかのリタイアを喫する中、先頭を行くJ・ロレンソは始終安定した走りでレースを牽引。一人旅ながらペースを乱すことのない圧巻の走りを見せつけた。
結局レースを制したのは、始終安定した走りで後続を寄せ付けなかったJ・ロレンソ。スペインGP、フランスGPに続く優勝で今季3連勝とその好調ぶりを示した。2位はポール・ポジションからスタートしたA・イアンノーネ、3位はポイントリーダーのV・ロッシ、4位はD・ペドロサという結果になった。A・イアンノーネはMotoGPの自己最高位を更新、V・ロッシは今季開幕戦から6戦連続の表彰台獲得を果たした。
今季、開幕直後はやや不調気味に見えたJ・ロレンソがここ3戦連勝で完全復調。圧倒的な強さと安定感でポイントリーダーのV・ロッシを猛烈に追い上げ始めた。だが、V・ロッシも好調をキープしており、イタリアGPを終えた段階でのポイントはV・ロッシが118P、J・ロレンソが112P、その差は6P。ヤマハの2人のポイント争いは白熱してきた。
さらに面白いのはドゥカティ勢の躍進である。今季、圧倒的なストレートスピードを誇るドゥカティのマシンは好調ヤマハにとってもまた巻き返しを狙うホンダにとっても脅威。特に今回のイタリアGPではロングストレートで350km/hオーバーを記録しており、今季6戦でもストレートスピードは他のチームと比べて頭一つ抜けている。今戦はマシントラブルに見舞われリタイアとなったA・ドビツィオーゾも、今季6戦を終えて4回表彰台を獲得しており、チャンピオンシップに絡んでくる可能性は大いにある。
また、今季はいまいち奮わないホンダ勢だが、今回のイタリアGPではM・マルケスがレース中盤まではその速さを取り戻したかに見える走りを見せており、チームメイトのD・ペドロサも4位とまずまずの位置につけている。MotoGPはまだシーズン1/3を消化したばかり。今後の開発の仕方によってはホンダ勢が一気に巻き返すという展開もないとは言えない。
次戦カタルニアGPの決勝は6月14日。このままヤマハ勢が独走して牙城を築き上げるのか、それとも好調ドゥカティが追いすがるか、はたまたホンダ勢が一矢報いるか――次戦は前半戦の行方を占う大事なレースになることは間違いないだろう。(編集担当:熊谷けい)