【村山貢司の気象&経済歳時記】新幹線の混雑と生産人口の減少に思う

2015年5月30日 08:53

 新幹線が混んでいる。5月下旬に大阪と名古屋で講演があり、新幹線を利用したが大阪は往復とも指定席は満席、名古屋の往復もほぼ満席であった。

 これまで株価だけが上昇しているような景気回復であったが、人が多く動くようになると本格的な景気の回復感が出てくる。しかし、新幹線が混んでいる理由の一つに外国人の乗車が多いというのもある。

 2015年の訪日外国人数は1月から4月の累計でおよそ590万人、すでに14年の44%にもなっており、このまま推移すれば年内に1500万人を超えることは確実であろう。4月までの月平均は147万人、前年比の平均は44%増である。日本での滞在期間を平均1週間とすれば、平均して日本人口が36万人増加したのと同じ効果がある。

 総務省の統計によれば2014年の国内の人口は21万5千人減少しているが、これを上回る人数が日本に来ているということになる。訪日外国人は国内での宿泊、買い物など消費増大に大きな役割を果たしているが、問題は将来的な労働力不足である。

 日銀の黒田総裁もこの件には憂慮を示している。14年における15歳から64歳の生産年齢人口は116万減少し、人口の61%にまで落ち込んでいる。一方、65歳以上は26%に増加し、少子高齢化に拍車がかかっている。少子高齢化対策はこれまでの縦割り行政では解決が難しく、政府主導で迅速に進める必要がある。

 一つは女性の労働力確保のための制度で、フランスのようにゼロ歳から確実に保育が保障されるシステムを作ることである。一方で、高齢者の労働力を活用するために当面70歳までの雇用を安定化させる必要がある。70歳までを労働人口に組み入れれば年金の多少の減額も可能になるだろう。人が家庭から外に働きに出れば必ず国内の消費が増加するはずである。(気象予報士・経済評論家・村山貢司)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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